東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

暮らしを語り、想いをつなぐ。

お問い合わせ

親父のかたみ「金衛丸」に乗って

サラリーマンと漁師、二つの顔を持ちながら

002-top
  • 話し手: 芳賀衛さん
  • 聞き手: 代田七瀬
  • 聞いた日: 2011年7月9日
  • 002/101

自己紹介 ?親父もおふくろも俺も吉里吉里人?

 名前は芳賀衛(はがまもる)。昭和22年、12月16日生まれで、今は63歳。岩手県大槌町の吉里吉里で生まれて、一人っ子だ。親父もおふくろも吉里吉里人。俺も吉里吉里人。兄弟はいないけれども、親父もおふくろも10人ほどの兄弟。それが全部地元にいるから、俺のいとこたちいっぱいいるけど、全部吉里吉里人(笑)

 俺は会社員だったのさ、新日鉄の。63歳まで働ける権利はあったども、職責は十二分に果たしたと思ったので、60.5歳で退職して。そのあとも岩手県釜石市の港の安全保安要員しながら、半分漁師して。亡くなったけんども親父が漁をしよったから、親父の遺産の船も組合権もあったから、会社を辞めたんで、そのまま大槌町漁業協同組合の正組合員にしてもらって。

 子どもは、長男と二番目は娘。長男の子どもが二人、娘の方には子どもが三人。家には息子夫婦と女房と住んでる。今回の津波(2011年3月11日の東日本大震災)で、家は一階が全部浸かったんだ。家族は幸い私の娘や子どもたちも全員無事で。家の二階がもったから、今は二階の方に住んでんだ。

 

あの日 ?吉里吉里に戻ったら、はぁもう瓦礫の山だった?

 地震当日は、16時から0時までの勤務だった。ぼちぼち釜石の港で保安要員の遅番なんで、会社に行こうかなと思ったら、すごい地震だんでさ。昼番の8時から16時までの人間がそこにおるから心配でよ。行かなきゃなんないなと思って、車で釜石まで走ったの。

 全ての信号が遮断してて、ローソン大槌バイパス店の信号も遮断しておったから、町から車が、どんどん出てくるわけよ。20台くらい通し、少し車が切れたんで、今度は俺がトンネル抜けて隣町の鵜住居(うのすまい)片岸(かたぎし)付近を通ろうとしたら、波が見えたのよ。慌てて急ブレーキを踏んで、Uターンして、また大槌に戻ってきたのよ。だから、俺がバイパスで先に出した車が、全部流された。ローソン前に戻ってきて、第一波が来た。這い上がってきた何人かに手を貸して掬いあげてさ。必死でな。でも助けようがないんだもんな。その後、第1波が引いたので家に戻ろうとしたけど、大槌城山トンネルで通行不可能となって。そこで第2波から第5、6波まで足止めとなって、それで夕方の5時半過ぎかな。波が引いたから、家に帰った。そしたから、はぁもう瓦礫の山だったもん。吉里吉里は、全部で750戸あるうち、約300戸が全壊と半壊だ。

 俺もさ、チリ津波と十勝沖の津波と、二回経験してるんだよね。チリの時は中学校一年生だったな。もちろん、堤防もなかったしさ。その二つの津波の予想をはるかに超えたもんな。すんごい力だもんな。自然の力には勝てない。

 

震災後のガレキ撤去 ?なあに、当たり前だって思ってな?

 膝が痛いのは、津波の翌日からガレキの片づけをずっとやってきたからだ。震災当時は、現役の消防団はな、津波警報が発令中だし、隣の大槌が火事で何度も招集かかるし。だから地元には消防団員がいないんだもん。OBがやっぱりしきんなきゃってことで。俺も昔は消防の分団長もしたし、二丁目の町内会の会長もしたし、中学校のPTA会長もしたしさ。消防の分団長をやったのは、50から52歳の時。昔から吉里吉里は若い人に任せてたの。そうすると、もうOBになる。そのOBとかが津波の翌日から作業したんだ。

 瓦礫の撤去では、避難した人たちがアクセスできる道路を確保したいし、救援物資を運んでくれるヘリコプターのヘリポートが家の近くにあるの知ってたから、それを確保したいと。と同時に、90名近くの人たちが見当たらないってわかってたんで、どっかの瓦礫の下にいるはずだと。ならば、少しでも早く、1時間でも早く救出したいという想いでもって、瓦礫の撤去して、道路をつくっていったと。もちろん、生きて救出された人はいなかった。そこにも、あそこにもって、日がたつたびに見つかっていったんだけどね。特徴も知ってるしな。太っているとか、頭が禿げているとか。どこの誰だか、だいたいわかるわけだな。自衛隊から「どこに遺体が上がってる」って連絡きて、すぐにかけつけて、「あ、これはどこのだれだって」言って、すぐに遺族に連絡して。吉里吉里は、55人の遺体があがっているの。33名がまだ見つからない(2011年7月9日現在)。一人でも生存して救出したかった。

 今は45号線が通って隣町の大槌まですぐだけど、昔の旧道っていうのはずっと沿岸沿いを走ってて、何かあると孤立すんだもん。それで、自分の地域は自分で守んなくちゃいけないと、消防団で先輩たちに言われてきたし、同じことを後輩たちに指導したからな。自分たちで瓦礫撤去したりするのは、「なあに、当たり前だ。」って思ってんだけどもさ。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
「聞き書き」とは 詳細はこちら 一覧はこちら