東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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親父のかたみ「金衛丸」に乗って

サラリーマンと漁師、二つの顔を持ちながら

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  • 話し手: 芳賀衛さん
  • 聞き手: 代田七瀬
  • 聞いた日: 2011年7月9日
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新日鉄の仕事 ?家にいても海だべし、会社に行っても海だ?

 もともとほら、俺は会社員さ。昭和41年の釜石南高校卒業と同時に新日鉄(新日本製鉄株式会社)の釜石製鐵所でサラリーマン。42.5年間。新日鉄に入ってからも、地元から通ったからな。ずっと釜石に。

 新日鉄での仕事は、輸送業、特に海運。家にいても海だべし、会社に行っても海だ。会社が決めた配置だったんだけどな。たまたま配属されたのが海だったし、私だけがどこにも転勤しないで、ずっと同じ職場におって。もちろん、出張はあるけれどもな。

 輸送は、関東以北はトラック、関東以西は船がベース。一番南の方では、九州の小倉。その方がコストがかからないんだよ。その関係の仕事をずっとしとった。輸送業一本。

 釜石の専用桟橋から、船をつけてもらって、そこから製品が送られるんだ。納期に合わせて。一旦製品ができると、倉庫に保管して、出荷に合わせて物を揃えて、船が入れば、その船に一気に積んで、船を出すわけさ。疵とか、錆びとかのクレームがあれば対応せねば。トラックの方もやったけども、トラックはあんまりクレームないんだよ。今日積んで明日着くから。

 だから、俺は海岸の方の生き字引。どこに何が入っているかわかんだもん。地下の中までよ、どこに配管や水道管が入っててって。皆聞いてくるんだもん。「どこに配管が入ってる?」って。お前らプロだろ、俺に聴く必要ねぇべって。それがほら、この震災で会社もやられたべ。あぁ、涙がでたったな。うわぁー、こんなにやられてしまったかって。

 

新日鉄を退職して ?海での安全を管理せよって。あとはウニとか採りながら?

 親父が漁師だったけど、継がないで新日鉄に就職したわけ。で、新日鉄で42年も働いたから、もういいだろってことで辞めたんだ。して、たまたま私が辞めた時にさ、SOLAS条約ってわかんないか? 9.11のアメリカの事件以来さ、テロの対策のために、外国船が一年間に12隻以上入る、定められた港に関しては、私設桟橋であろうが、公共桟橋であろうが、全て保安要員をたてて、テロの防止をしなさいという世界条約なのさ。Safety of Life at Sea いわゆる海での安全な生活を管理せよってこと。

 俺は、新日鉄の桟橋に船が入った時に保安要員にいくわけだ。一日座って、船員の出入をチェックすると。多少英語を言えばいいんだからさ。外国人に、どこにいくとかさ、何買いに行くんだとか、何時に帰るかとか聞いて。中国人とフィリピン人が多い。毎日その仕事があるわけでないから。月に半分くらいだ。

 あと半分は地元にいる。ウニとかアワビとかを採りながら。

 

遺産を受け継いで ?船の名前は金衛丸(きんえいまる)だ?

 漁に出たのは最近だよ。61歳から。ウニやアワビを採ってる。ま、漁自体は本業でなかったからな。船にのってアワビ採ったりするのは、気持ちがな、せいせいして。趣味半分、半分は、あんまり家計の足しにはなんないかもしれないけど。

 親父は遠洋マグロだったの、若い時はな。神奈川県の三浦三崎にいってたの。それから親父はワカメやホタテ、ホヤ、カキの養殖もやってたな。アワビやウニも採ってた。

 3、4月にワカメ、4月から7月にウニがとれて、11月から1月がアワビ、その間にも、ホヤとかホタテやカキの養殖の水揚げがあるわけさ。それは年中水揚げするんだ。だから、年がら年中忙しいんだよ。ウニとかアワビだけだったら、何にもなんない。ワカメ、ホタテ、ホヤ、カキをやって、なんとか生計を立てる人が多いわけ。

 

父親が残してくれた「金衛丸」

 漁師の生計でもって飯を食わされてたからな。漁師の生活は分かっているからな。漁民ちゅうのはどういうものかって。親父も、自分の息子には、できれば継がせたくないと、サラリーマンであった方がよいんでないかという想いがあったんじゃないかな。ずいぶん前の話だから、忘れてしまったけどな。

 親父が漁を辞めた時には、まだ俺が現役で会社で働きよったからな。養殖施設とかはさ、親父が辞めたらもう組合の方に返すんだって、組合の方に返した。平成14年に親父が亡くなって、俺が会社退職したのが平成20年で60.5歳の時。親父が組合の出資金証書あるからな、兄弟がないからそれを受け継いで。アワビやウニは養殖でないから、漁協の組合員であれば出漁する権利もあるし。たまたま、親父が残した船もあったんで。親父が金次郎という名前だ。俺の名前が衛。だから、船の名前は金衛丸だ。親父の遺産でもあるし、その船を使ってやっとったの。

 瓦礫の撤去とか行方不明の捜索しとった時、ある人から「お前の船が、向こうにあるぞ」って言われてね。形が残っているばっかりでもね、嬉しかったね。でも塩水が入っててな。もう廃船だ。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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