東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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  • 話し手: 釜石稔さん
  • 聞き手: 福島空
  • 聞いた日: 2011年7月9日
  • 003/101
ページ:4

あの日 3月11日 ―弁当が―

自分とこのガソリンスタンドにいて、ああまともな地震じゃねえな、と。昼飯いつも15時だから、あぁこりゃやばいな、飯食べとかねばねぇなと思って弁当開いてさ、二口食べたっけさー、前から「津波だー!」ってさ。もう、あの時の弁当、いまだにさ惜しくてさ。

 

そっで外さ出たわけだ、国道のとこさ。そしたらちょうど公民館からちょっと上に、2月頃引っ越してきた新築した家があるんですよ。それがね、ふあーっと浮いたのさ。ローソンと公民館の間ぐらいに家がある。だからローソンよりほんのちょっと下だよ。それですらさ、うちのスタンドにさ来るっつー気持ちはぜんっぜん無かった。さらっさら。うあー気の毒になー、あの子だち、若いもんだからさ、気の毒になーって見ながらさ、静かに走ってて。で、消防が下から俺んとこさ「釜石さん何してんの早く逃げろー!」ってさ。そいでハー、あとは一目散にそこの上山商店ていう、今はもう店やめたけど、あそこに酒屋さんの看板があって、あそこの側さ行ったら、人が全部こっちを向いてて、で、あ、ここまでは来ないんだなー。で、後はゆっくり走って。それで見だどきは、振り返った時は、うちのスタンドはキャノピーって、屋根があんでしょ。あれがよその家があだって、そのまま20mぐらい国道塞いでしまったわけだ。ほしてあど、立派な家が3軒さその下さ、ドンドンドンてハー、おさまってしまってさ。んだから相当の破壊力なんだね。

津波最高到達点に自衛隊への感謝の言葉が

あどは下からきたのは、下の壁にそのままぶつかって、うちのスタンドの上に、よその2階がドンて一挙にのっかっててさ。ハハハー、ハハハー!

そして、そこの中学校から降りたところから5、6m下が最高到達点になってるからね。それも国土地理院の打ってった杭があるけど。

 

まさか来るとは

だけど正直ぃ、地震がおぎたときはスタンドにおったんだけども、あそこまでぇ津波が来るっていう、ゆめゆめ思わなかったす。昭和8年のときも35年の時も、あの下だったからさ、しかも私は2m以上土盛りしてる。前の地盤でさえ来てないからさ。さらに2mも国道の高さに合わせて作ったからさ。ゆめゆめくるとは思わなかったわけだ、あそこまで。しかも当時は今みたいな立派な堤防があるわけじゃなしさ。

 

商売道具のローリー車

あの日たまたま3kl灯油頼まれてさ、うちのローリー1klしかはいんないからさ、2kl配達終わって3回目の計って180ぐらいの辺りで、津波だーって言うんでハそのまま。それこそ古いローリーばっかり助かって。新しい方のローリーは海に持ってかれてしまって。ハハハハー!

あどは、個人の車はみんな、従業員の車も、やー気の毒してさ。俺だけのって思うと仕方ないけどさ、従業員の車もみんなハ、どこさかいったか分からない。だからまったく一番最っ高古いローリー1台だけ。ハハハハー!案の定ハー、このまえ故障してさ(笑)。あのローリー、使えなくなって。前は車5台あったんだけど。いま仕方ねえ、ポリ缶で配達して、ポリ缶配りながら。

 

自宅が沼に

いつぐらい行ったのかなー、だいぶハ薄暗くなってからだけど。こっち(スタンド)の方、大体の目途つけてから行ったからさ。まだ手元はきちんと見えてる時間。で、家どうなったべかなーと思って見だときはもうハー、通常の道は通れなくてさ、駅の方からぐるーっと廻ってさ、私の家は駅からすぐ下だけどさ、うちさいったらもう、ちょうど庭がさ、くるぶしのあたりまで沼になっててさ。ほして、その時乾燥しておったから、「水が湧くように」の逆さ、水が浸透してやったの、ぶくぶくぶくぶく音してさ。そして石垣は破壊、ブロックは破壊、あとは付属の建物も1箇所だけ破壊したった。あとはよその家が3軒うちの庭さ飛び込んできたった。瓦礫も。それらは後で自衛隊の方から降ろしてもらったけどさ。

住民が感じる吉里吉里の地盤

ほいで、うちは堤防の、海側にも数カ所、戦前は船かけておった関係で土地があんだけどさ、もう今は完全に波の、ハハ、波打ち際で、無価値だ。あれは規定で、波打ちの何mは自動的に国のもんになって。だけど、それを売買しないかぎりは、新潟沖みたいに隆起して、太平洋側が下がってきて、新潟が上がってきて、それで昔の所有者が復活してるの。そういう形になっかもわかんねの。

ここも国土地理院の発表では78cm地盤沈下したって発表になってっけど。俺が聞いた漁師だちからの、うちのスタンド来てお客さんで来てる人だちの話では、「いやハー、どう見たって1m30cm以上は沈下してる」て話が専らなの。ま、素人だからさ、国土地理院のは正しんだろうけどね。ただ、生活感つの、要するに肌で感じる人だちの話しぶり。「なん…どう見たって、あそこの堤防の波の水面はここだったのに、(今は)ここだ」とかさ。生活感からいえば1m30cmはここは沈下してんじゃないかなーと思ってるんだけどね。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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