東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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魚釣りが大好き

たくさん仕事を引き受けてしまう親分肌

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  • 話し手: 平野栄紀さん
  • 聞き手: 大崎智子
  • 聞いた日: 2011年7月9日
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子ども時代の思い出

きれいな海が吉里吉里の子どもたちの遊び場

 子どものときは自然を相手にした遊びをしてましたねぇ。このへんの木に登ったり日が暮れるまで外で遊んでましたよ、ちっさいころは。夏は男の子は海水浴行って、素潜りでウニとかアワビとかとってそのまんま食べたり、焼いて食べたり。女の子はしないけどね。みんなそれぞれちゃんと泳ぎはできてらったし。

 親父は大阪商船ってところで働いてらったんです。私が小さかった当時は仕事が忙しかったんで、親父が日本に帰って来るのは半年に1回ぐらいでとかいう感じで。おふくろは親父が帰って来れば子どもたちを連れて親父に会いに行くわけですねぇ。兄弟は、私、弟、妹、妹の4人です。電車なんてない時代ですからね、一晩かけて夜行で。横浜、神戸、大阪、名古屋…日本中どこでもおふくろと行きましたよ。それこそこっちから見れば都会です。だから都会には全然憧れなかった。

 あとは休暇で1、2ヶ月、親父が家にいるわけです。だからほとんど母子家庭みたいなもんで育ちました。小さい頃は、「なんで家は親父がいない…」「たまに帰って来るこの人、どこの人なんだろう?」って思いましたよぉ。

 少し大きくなって親父の仕事に憧れたのは、ただで世界に行けるでしょう、それこそ世界の海を回れるんです。台湾、香港、シンガポール、ヨーロッパとか、立ち寄った港から手紙をよこすわけですね。それからお土産をいろいろ買って来てくれまして。私が小さい頃はバナナなんてなかったですからね。親父はこっちを出るとき木箱にりんごを詰めて行って、帰り台湾でバナナを入れて帰って来る。当時は宅急便なんてないですから、駅から駅に送ってよこすんです。そして私がリヤカー引いて、ここの村の駅に荷物を取りに行くんですよ。だから缶ミルク、チョコレート、日本や外国のおもちゃ…地元にないものがけっこうありましたねぇ。一口チョコみたいなのをポケットに入れて遊びに行って、自分より小さい子どもにやったりしました。

 おふくろは水産加工のお手伝いしたりもしましたけど、親父は給料取りで毎月決まったものが入って来るわけだし、そんなに働かなくたってよかった。だからうちは恵まれていたんです。

 

吉里吉里の魅力

 私も漁業権あるんですよ。おじいちゃんが漁師だったんで、おじいちゃんが亡くなっておじいちゃんの漁業権を親父に書き換えて、親父も85歳ですから親父の漁業権を私に。漁業権ってのは、家族にしか譲渡できない。自分の船もありました、当然船も流されてますよねぇ。ほんとに小さな(両腕を広げて)このくらいの船。16尺ですからすごいちっさい船。私みたいなのは仕事の合間に趣味でやるんですけど、もちろん海好きだから。

 今ちょうどウニの時期なんです。ウニ漁は5月から8月の初めまでの月木って決まってます。

 朝の3時くらいに起きて漁に出て、6時、7時くらいまで漁をして。帰って来て、ウニの殻を剥いて身だけ出して、それを選定して吉里吉里漁港の組合に出荷するわけです。その作業をうちのおふくろと二人でやって。私は自営業ですから時間関係ないですからね。ウニの値段はその日の入札で決まってるんです。その日の水揚げに対しての金額が、だいたい1週間から10日くらいで自分の口座に振り込まれるんです。体のいいアルバイトです。

 漁のやり方は、小さなときからおじいちゃんや親戚の人に連れて行ってもらって、身についてるんです。昔船にエンジンがない時代には、櫓(ろ)で漕いだりしました。それも好きでなきゃできないですけどね。兄弟のなかでも漁に連れて行かれたのは私だけでした。うちの親父は次男なんですけれども、親父の兄貴が船で遭難して亡くなったんで、親父が跡継いでおじいちゃんと同居してたんですね。年寄りといると、いろんな技術なんかが脈々とつながっていくわけですよ。

 漁業はまたやりたいですよぉ。すぐ船を買おうと思ってます。保険が下りただけでは船買えないんで当然借金してね。漁業は趣味ですから、趣味にはお金かけなくちゃ。そのために今この仕事でがんばってる。今の時期だとカレイやアイナメが釣れますよ。土曜日とか日曜日に釣りに行くんです、朝早ーくから。いいですよぉー、すごく。冷えたビールとか飲みながら魚釣りして、それで1週間のストレスを発散するんです。

 今度秋になるとサケだねぇ。筋子からイクラを作って贈り物にしたり。イクラは醤油漬けか塩漬けにします。醤油漬けは醤油を1回沸騰させて少し冷ましたところに漬けてね。どっちもご飯で食べます。

 冬場は海が荒れるねぇ。11月、12月のアワビ漁ってのは気温は氷点下になってとっても寒い。5時か5時半、6時、夜明け前に行きます。自分の場所ってもんがあるからね、人より先にここにいそうだって漁場に行くわけですよ。ウニとアワビの漁場はおんなじです。アワビは棹の先に鉤(かぎ)がついたもので獲るんです。箱メガネで海中を覗いて、アワビに鉤をかけて引き揚げるんです。アワビはキロあたり8千円か9千円くらいで買い取ってもらえます。1回の水揚げで10キロとか20キロとか獲れます。ただアワビは、11月に3回、12月に3回って年6回しか獲れない。組合が明日天候良さそうだってときに口開けですよ、って放送をする。当然天候が悪くなりさえすれば、口止めですよ、って放送をする。だから勝手には行かれない。

 春はねぇ、漁業の人たちはワカメの収穫ですよ。ちょうど津波のあたりからワカメが採れるんです、ワカメの養殖してるんで。たった1ヶ月の間ですよ。あと1週間から10日で収穫というところで津波が来ちゃったんです。うちも本家はワカメの養殖してらったんで、手伝いに行ったりするとワカメもらえたんです。

 吉里吉里は、趣味で漁業をやってる人が結構多いですよぉ。みんな魚釣りが大好きなんですよ。漁業権なくても魚釣りはできるからね。漁業権があるとその魚を出荷できるんです。やっぱり吉里吉里のいいところって言ったら景色がきれいだったし、海岸だってきれいだったし。

 

御霊まつりでの獅子舞

 あと1年に1回なんですけれども、秋に5地区対抗の大運動会を吉里吉里小学校でやってます。子どもから大人、お年寄りまで何百人参加するんでしょうねぇ? そういうなのに燃える地区なんです、なんかわかんないけど。また夏にはお祭りがあって、各々の町内会で山車が出たり踊りとか郷土芸能をしたり、結構一年のうちに地区を網羅したような行事があるんです。

 ここの地区には、神楽(獅子舞)、虎舞、鹿踊り(ししおどり)の3つの郷土芸能の団体があるんですね。私は神楽―獅子舞の会長をやっています。虎舞は佐藤さん、鹿踊りは芳賀さんが会長してます。私はそれ以外に神社の役員、お寺の総代もして、そして町内会長でしょう? そのほかにも大槌町の交通安全指導隊の隊長、釜石警察署管轄の岩手県交通安全推進委員の会長もしてまして。子どもたちが小さい頃はPTAもしてましたでしょう? みんなには趣味だって言われるけど、趣味じゃないです。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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