東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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  • 話し手: 松村美代子さん
  • 聞き手: 市川薫
  • 聞いた日: 2011年7月30日
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生い立ち

 私は7人兄弟の下から2番目なんですよ。兄たちは、みんな船の関係の仕事なんです。昔はみんな漁船だったんです。二十歳のときに亡くなった父はイカ釣り船に乗っていましたしね。長兄は仕事の時は千葉に行っていて、2番の兄は、焼津でマグロ船に乗っているんですよ。3番目は川崎の方に陸の仕事に行っていて、油を積んできた大きな船から陸の方に接続する仕事をしています。4番目の兄は北海道の方でトロール船に乗っているんですよ。兄貴たちはみんな地震のときはいなかったんです。私のすぐ上は姉で田野浜に嫁いでいます。7番目の妹は、盛岡の方に嫁いでいるんです。だいたい2歳くらいずつ離れていて、長男とは12歳違います。小さいころは、特に4番目の兄や、5番目の姉に、くっついて一緒に遊んでいました。今になって兄弟はいっぱいあって良かったなって思いますよ。兄たちは普段はいませんが、誰かが帰って来れば、どっかの家に集まって宴会なんですよ。

海は子どもの遊び場

 小さいときからもちろん海で遊びましたよ。いま瓦礫がいっぱい積まっているところが岩場だったんですけど、そこの近くでよく海水浴をしましたし、生き物をとったりとかね。うちらの小さいときは、プールっていうのが無くて、中学校の3年生頃にできたんですけどね。自分では海で泳いでいるのが「泳げる」っていう意識だったんです。でも、プールで25m泳ぐっていうのは、こんなにつらいのかなって思った気がします。

 小学校のとき、5月5日の子供の日になると、兄貴たちについて、紙で国旗をつくって木の上にぶら下げて遊んだりもしたったんですよ。それから、山で木の実を食べたりもしました。地主さんに怒鳴られるから、見張りをつけて、あんた今度見張りしてろよって感じで。それから、牛小屋の上の、屋根裏に藁を敷くんです。そこで隠れ鬼ごっこをして、藁の間に落ちたりとか。うちの近くの畑とか、学校とかで、石けりとか縄跳びとか相撲とかね。遊びには困らなかったですね。

 地元を離れたことはあります。高校卒業してから、盛岡の方で病院の看護助手の方をしていました。交代制もあったし忙しかったですね。それに、最初の方はやっぱり苦しかったですよ。ここでは常に海を見ていたから、盛岡で建物がごちゃごちゃしているのを見ると息苦しかったんですよ。実家に汽車で帰ってくる時に海が見えてくると、ああ家に帰ってきたなあって思っていました。海で育ったもんだから。

 5年ほど勤めましたが、やっぱり地元がいいと思って帰ってきました。結婚するまでカメラなどの部品工場にお手伝いに行っていたんです。旦那とはね、旦那の伯父のところに、私の叔母が嫁いでいるんです。私が盛岡から帰ってきた後、そろそろ結婚した方がよいんじゃないかってなって、伯父様がうちの甥っ子といっしょにならないかって。親戚だし、旦那の方が年が2つ上で、姉の同級生だからもちろん知っていました。旦那は仕事に行っている時期が長いから、子供たちが小さいときは、お父さんにいてもらいたいって思ったんだけど、今は楽かなっていう感じ。いるといないのとでは生活が全然違うしね。休暇のときは4か月くらいですね。結婚してからはそうやってずっと主婦をして、41歳頃から8年間、近くの老人ホームでホームヘルパーをしていました。それから、じいちゃんも年取っていたし、みなきゃいけないなと思って仕事やめました。でも2年前に亡くなったんです。これからみなきゃいけないなあと思っていた時に。

 

吉里吉里

吉里吉里小学校で行われた運動会

 町内会は1月7日にどんど焼きをします。その準備が各丁目の当番制です。それから、10月の第一日曜日に、吉里吉里地区の運動会があります。子供から大人まで、年齢で種目を作ってやるんです。本当に面白いですよ。障害物競争とか、年齢別に代表を決めて丁目対抗リレーとかね。8月の第3週目の土日には、部落でお祭りがあるんです。鹿子踊り(ししおどり)、神楽、虎舞とか踊ってね。山車は4団体、手踊りも4団体が出ます。手踊りっていうのは、各丁目ごとに振りを付けて踊るものです。競うってことはないけども。その年によって振りが違うのよ。これらが、神社から繰り出して、まず、海の方まで行って、それから住宅街をぐるぐる歩いて、午後に4丁目に上がって降りてきて、最後にお神輿を神社に納める。一日がかりでまわります。みんながお祭りに出るから、見る人が少ないの。以前はね、8月16日が宵宮で17日がお祭りだったんだけど、踊るのに平日にぶつかると大変なので、第三の土日に決めたんです。他の行事? 町内会の掃除があります。海の日は小学校から大人まで一斉で海岸掃除だし、お寺の掃除は4月ごろから月ごとに各丁目の当番制で行って、8月のお盆前は一斉にみんなで草取りしたりするんです。

 こういう行事が多いから地域のまとまりがすごくてね。この地域の人たちはね、だいたい保育園から中学校までは、一つだからね。割とまとまっている。電話一本で、「今度ここに行かないって」いって、「じゃあそうするが」、とかって言って、集まりやすい感じ。ほとんど同級生は、地元にいれば気軽に声かけてお茶飲んだりして。私の同級生が今度の津波で亡くなったんだけどね・・・。まだ見つかっていないんですよ。見つかったらお線香あげに行きたいんだけどね。それから、地震のとき、2丁目お茶っこの会っていうのをやっていたんですよ。65歳以上の人たちを対象に、2か月に一度くらい消防の屯所に集まってお茶飲みをしたり、料理やゲーム、話を聞いたりという会があったんです。そこに来た人たちはほとんど亡くなったんです。それを思うとね、すごく悲しい。町内会で自主防災とか組織も作ってやったし、いろいろやってきたんだけど、なんで逃げなかったのかなって思うし。消防の屯所に、お祭りの道具や半纏とかを保管していたんだけど、それも全部流されてしまってね。1枚でもあったらなと思って探したけどやっぱりなかった。ちゃんと衣装ケースにいれてしまっていたから、そのまま流れて行ったんじゃないかな。まるまるないもの。小物とか全部新しくして3年しか経っていないかな。今年はお祭りはないんでしょうね、もちろん。またいつかできるといいわね。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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