東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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故郷の役に立ちたい

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  • 話し手: 松村美代子さん
  • 聞き手: 市川薫
  • 聞いた日: 2011年7月30日
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地域の役に立ちたい

 私はたまたま町内会の2丁目の役員なんですよ。だから、3月11日の後、町内会の安否確認をしてほしいっていうことで、全戸歩いて、娘たちにも手伝ってもらって避難者の名簿を作ったり、在宅の方用の、物資の仕分けをしていたんです。自衛隊さんは注文用紙を持って来るんですけ。それに、在宅の方で何が必要なのか、考えながらチェックするのも大変でした。まず食べ物はあるものは受けるからって自衛隊さんに言いました。それから、例えばシャンプーとか、ラップとか、ごみ袋、洗剤は1か月おきに、こちらで考えて注文して、ケースに分けて。各家の方に取りに来てもらって、その時に出入りとか聞いて。在宅の方でも出入りが多かったから、人数確認しないと、注文数が変わるでしょ。それが大変だったんですよ。

 途中から、だんだん店が出てきて、6月頃からは車があれば行ける状態になりました。だから、自立しないといけないねって話になって、お店に行って買えるものは頼まないで、在庫であるものだけでいいです、って形にしました。自衛隊さんは遠慮しないで言ってくれたけど、うちのほうは家があるから、まず食糧だけあればいいですって。ほんとうに自衛隊さんってありがたいもんですね。配給が終わったときに、ある人が涙流して、「本当にありがたかったよね」って言ってくれた。自分たちは何気なくやっていたんだけど、受け取る人にすればそうだったのかなって思って、「ああやって良かった」って、すごくほっとして、うれしくてね。

 それから、炊き出しの窓口になって、ボランティアセンターさんから「○○さんから炊き出しがあります」と連絡を受けて、地域の人たちにポスター貼って知らせたりもしていました。結構いっぱい来ましたよ。うどんとか、浜名湖のうなぎとか、長野からも来ました。あとは、お弁当屋さんも来たて。3、4回やったんだけど。ありがたかったです、本当に。「映像で見るよりすごいですね」って必ずみんな口にしていくんですっけ。

 町内会の運動会に使っている鉢巻が、たまたまうちに保管していたから、残ったんだけれど、それに一本一本、「支援ありがとうございます」って書いて、ボランティアの炊き出しに来てくれた人たちに、渡しました。何もお返しできないですけど、記念にとっておいてくださいって。212本あったのかな。

 やっぱり必死でした、この4か月間。この先も何かしたいって思うんだけど、何ができるのかなとも思う。ただ、何か声をかれられれば、行けるような状態にしているんです。子供たちも手を離れているし、みんなの役に立ちたいなと思って。最近ね、人が町を歩く姿がみえてきました。今まではボランティアの人の姿が見える程度で、誰一人歩かなかったもん。だから炊き出しの時とかに、「しばらくぶりだね」ってにぎやかになったんです。炊き出しが来てくれることによって、みんなが来るでしょ、そこで震災後初めて会ったっていう人たちが泣いたり笑ったり。それで、「受けてよかったね」って感動しました。早く元の通りになってもらいたいし、にぎやかな街になってほしいです。何といっても自分の故郷ですから。私は好きです、自分の故郷が。やっぱり人かな。昔からいるから。「おーい」って声かければ「おーい」って感じ。いい場所よ。

 

【プロフィール】

話し手:松村美代子さん

吉里吉里生まれ。家族は夫と娘二人。震災時は近くの実家で親戚と生活を送るかたわら、在宅者用の物資支援の分配や、炊き出しの受け入れを行う。

聞き手:市川薫

国連大学高等研究所 リサーチフェロー。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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