東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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肝っ玉母ちゃん、吉里吉里に生きる

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  • 話し手: 小笠原広美さん
  • 聞き手: 簑原茜
  • 聞いた日: 2011年7月30日
  • 016/101
ページ:3

憎いけど憎みきれない、海への想い

今は3分の1くらいかな、漁師をしているのは。昔はほとんどの家が漁師だったんじゃないですかね。どこの家でも、みんな船乗りとか、家で何かの養殖をしてるだとか、船を持ってる家がほとんどで。でも今でも魚とか魚介類はもらうものなんですよ。買うもんじゃないんですよ。なのでそれがなくなると、魚って買うとこんな高いんだみたいな。結局、親戚も漁師とかなると、捕ってきた魚をみんなに分けるとか、遠洋に行ってればそれを帰ってきたときに分けるとかいうのもあるので、常にここ吉里吉里では大体の家で大きい冷凍庫を持ってるんですよ。うちにも、大人が二人体操座りして入れるようなのがあるんです。そういうところにワカメだったりとか海のものが入っていて、今回停電でそれも大変だったんですよ。

なかには、もう海が見たくないって内陸に引っ越した人も多いです。でも私は、、、うん、それでもやっぱ吉里吉里にいたいなって思います。ただね、やっぱ海はもういらないって思う。津波をきっかけにかな。その前は、この時期っていったら、仕事が休みだったら海にいるっていう生活でしたから。何するでもなく海にいるみたいな。

私たちの小さいときは、学校の行事でも、砂の芸術祭っていうのがあって、学校全部で海に行って、クラスごとに砂で何か造るっていうのをやってたんですね。あと、先生が今日暑いなっていうと、外に授業に行こうっていって、海に行ってみんなで遊んだりとかっていうのもあったし。ほんとは良くないんですけど、潜ってウニとかアワビとか採ってくるとか、学生のときにはみんながそういうのやってました。大人の人も分かってて、ダメだぞって放置してるっていう(笑)。そういうのして育ってるから、何かこう、海に対して悪い印象がないんですよね。逆に海がないとさびしいなって。ただ、こういうふうになるんだったら、海もういらない、砂浜いらないなって。でも、今だからいやだっていうけど、後々になれば、砂浜とか、泳いだりとかしたいのかなって。時間が経てばね。

 

吉里吉里に残る人、去っていく人

私の同級生も地元に残ってるっていうのは少ないですね。私の同級生って70人ちょっとぐらいいるんですけど、そのなかでもやっぱり5、6人しか地元に残らない。あとはみんなお嫁さんに行ったりとか、県外で働いているとか。私も実際釜石に嫁に行ったんですけど戻ってきてるので。やっぱり居心地がいいんですよね。何が違うんだろう、他人がいないっていうのかな。みんなが知っている人。でもそれがいやだって出る人も逆にいますけどね。人によると思うんですけど。子供たちもこの人がどこの誰だと分かるようになると悪いこともできないし、みんなに見張られてるみたいな(笑)。なので子供を育てるには逆にいい環境だと思いますけどね。よその子でも、ダメだよそれは、とか怒ってくれるし。

これからこの街もどうなるのかね。元通りにはまず無理だと思うんですよ。なので、せめてあまり差し支えない程度にっていうか、住むところは高台に移してもらうだとか、あとは、地形が崩れないように、グラウンドを造るとか、体育施設を造るとか。折角だから、永く人が集まれるようなところを造ってもらいたい。

子供がいる人はそういった話するんですけど、中にはどうにもなんないからね、出たほうがいいよっていう人もいるし。お年寄りは逆に残りたいっていう人が多いです。私たちぐらいの歳だと半々です。子供がいる人とか、街を変えてくれたほうがいいっていう人と、今はもう無理だよって言ってそれこそ盛岡とか北上とか内陸に引っ越してしまう人と。考え方なんでしょうね。自分の街をどうにかしようって思うか、それとも子供のために伸び伸びした環境を整えようと思うか、じゃないですか? 中学校でクラブ活動するっていっても、マラソンするのも瓦礫の中なんですよ。大槌も小学校とか中学校とか残ってないので、吉里吉里に来てるんですよね。自分の学校なのに、自分の学校のものが満足に使えない。そういう思いをさせたくないってみんな引っ越しちゃうんですね。

でもそれが現実だから、受け止めていくしかない。それで何か子供が変われば、それはそれで絶対悪くは変わらないじゃないですか。それもまた経験かなと思って。だから見せたほうが逆にいいと思いますけどね、私は。だって避けれないしね、無かったことにもできないですし。後は自分で成長してもらうしかない。

 

最後に・・・

落ち着いたなっていうのはやっぱり子供たちが学校に行ってからですかね。学校が始まるっていうのは、もう大丈夫かなっていう安心感ですよね。みんなに「大丈夫?」とか、「精神的にどう?」とか聞かれるんですけど、案外そうでもないなって(笑)。

 

【プロフィール】

話し手:小笠原広美さん

吉里吉里生まれ、吉里吉里育ちの生粋の吉里吉里人。ショップの店員だったがお店が津波で流され現在休職中。専門学校生の息子さん、高校生の娘さんに加え、震災直後は子供さんの友人たちも含めた大所帯を支え、混乱の最中に町内の物資配給のために奔走した、逆境もチャンスに変えてしまう元気いっぱいの肝っ玉母ちゃん。

聞き手:簑原茜

国連大学高等研究所 SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ事務局 プログラムオフィサー

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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