東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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麦畑越しにあった海

津波がきたら逃げるのさ

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  • 話し手: 倉本俊博さん
  • 聞き手: 西田一平太
  • 聞いた日: 2011年7月31日
  • 023/101
ページ:3

道しるべを立てる

 この避難所の横、今は給食センターだけど昔は吉里中はここだったから、みんなこの体育館で卒業式したのさ。建てたのは33年前だっけ。おらはPTAやってて、おらの次男あたりのときだったものな。新しい建物ですごいきれいだった。で、その後、この体育館だけ残して古い建物壊して、新しい中学校作ったんだ。でも、この体育館も古くてね、雨漏りしてたの。生涯学習課でも維持費かかるから潰すつもりだったんだから。大槌町、金がねえから潰せって言ってたんだけど、千何百万かけて去年修理したもんね。屋根の修理して、電気も全部取り替えて。便所も新しくしたんだね。このためにしたんでねえんだよね。こんな津波が来っと思わなかったんだもん。ねえ、やっぱり鉄骨なんだねぇ。ああ、残してよかったよ。いちばん残してよかった、よかったで。

 でもね、もう5カ月経とうとしてるのよ。5カ月経とうとして、まだ片付いてないのよ。頑張ろうとか、そういう話はどん詰まりになるんでねえの。夢も希望もねえよ、俺たちは。なに夢語ったったって、夢で生きていかれねえよ。霞食って生きるわけじゃないしね。復興だって、金は国からもらって、できねえのは全部、国の責任にしてって。だども、最後に頼るのは国だからね。その国が全然決まんねえものが、なに、復興も復旧もなにもできねえんでねえ。どう思うよ、この惨状を見て。復興できっと思うか(笑)。えっ? 俺は夢は見ねえどもな。俺はいま62だべ。俺が生きてる間に見れっか。災害対策はある程度やって、あとは逃げるしかねえんだよ。

 俺たちの仕事は、このあと生きてるとき、少しずつでも役に立つ、なんつうか、道しるべを立ててやることですよ。まあ、いろいろ模索してるんですが。まず、当面の第一の目標はここの閉鎖ですね。みんなでお互いに理解し合って閉鎖して、自立してもらうと。何がねえだ、あれがねえだってでなく、最初に自立して経済を回していかねえと。経済って面白くてね、自立して儲ける人だけ儲けっからね。みんな儲けてもらってね。だから、最終的に雇用の場の話になるのね。結局、雇用の場がないと。これはやっぱり企業の誘致と。それは俺たちの仕事じゃねえからね。もうすぐ選挙があるんだべから、それを争点にしましょうよ。

 ここは8月10日以降は閉まるけど、閉まっても最後までいるよ、俺。1年間は辞令貰ってるから。最後までいるから、ここに。

 

【プロフィール】

話し手:倉本俊博さん

昭和24年生まれの根っからの吉里吉里人。長年漁協で勤務した後、町の職員として公民館で働く。現在も、一部被災した自宅から毎日、避難所の管理に通っている。

聞き手:西田一平太

公益財団法人 東京財団 研究員兼政策プロデューサー

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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