東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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よく言うのは、やっぱり海が好き、と。

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  • 話し手: 佐々木彰さん
  • 聞き手: 市川薫
  • 聞いた日: 2011年7月31日
  • 024/101

 私は佐々木彰(ささきあきら)といいます。吉里吉里で生まれて、ちょっと東京で仕事をしていたことはありますけど、後は吉里吉里に住んでいます。45歳です。両親、妻と高校2年の息子が一人。

 親父は宮古の方の出身なんだけど、お袋が吉里吉里出身で、結婚してここに所帯をもったんだ。兄弟は3つ年下の弟が1人。親父はここ30年くらい栃木の方で出稼ぎをやってたんだ。家に戻るのは盆とか正月とかで年に30日くらいだったかな。このあたりは、父親が常にいる人の方が割とめずらしかったよ。漁師町だからね。お袋は、吉里吉里の美容院で美容師をやっていたね。弟とは、それはもうよくケンカしたよ。1日の終わりはいつもケンカ。最初はにぎやかに、ぎゃあぎゃあいいながら遊んで、で、もつれて、「お前とは遊ばない!」ってケンカ別れして。翌朝起きればまた普通に、ね。兄弟では家の中の遊びが多かった。オセロ、トランプ、ボードゲームとかね。

 

夏は毎日海で

 夏はほぼ毎日海さ行ったね。友達5、6人、多いときは10人位で。うちらは、どちちかっていうと自然派だったね。どこさいくのにも一番前を走っていくリーダー格のやつとかいてね。これがまた勉強ができなくてね。俺はね、結構嗜好性が強くて、自分が好きだと思うことにはのめりこんで、そうでもないことには、俺はいっかなーって感じでテンション低かった。

 夏休みは10時でないと家を出られないわけさ。朝起きて、ラジオ体操やって、ごはん食べたら勉強。だって学校でそういう決まりなんだもの。だけど、9時頃になると、今日の天気を見たり、持って行くものを準備して、10時までなんて誰も勉強しねえねぇ。9時55分には全部自転車にセットして、またいで待っている。10時になると、今日は海で泳いでもいいですよっていうサインの「我は海の子」が鳴って、小学校の国旗掲揚のポールに白い旗が揚がるんだ。そうすると、それーって自転車で海さ行ってね。

 砂浜に行ったら、流木とか、壊れた船の木材とかいっぱいあるから、それを持って来てまず火をおこす。海に焚火は必ずつきものだからさ。自分たちが泳いできて寒かったらあたるし、何か採れば焼くし。だいたい夏休みの1日目に火をつけると、うんと大きい雨だの、台風だの来ねえば、ひと夏中持つのよ。前の日の終わりに、まだ火がくすぶっている燠(おき)の状態で、砂をかけておくのさ。翌朝行って、まず荷物おろすでしょ。皆して薪を探してもっていき、砂をささっと払って、それをふって吹くとまた火がぼってでて。そうすると、「よしっ」て言って海に入るんだよ。

夏休みは砂浜で遊ぶのが日課

 遊びは、例えば砂山を作ったりね。山の上さ棒を1本立てて、砂を少しずつ取っていって倒れないように。後はね、団子ぶつけ。海の砂を20?30cmくらいの団子に固めてね。例えば膝ぐらいの高さって決めて、相手が作った団子を下において落とすの。どっちが固いかを競い合うのよ。コツ?あるんだよね。水分だね。団子の表面は水分の乾き具合で、中の方は逆に水分の保ち具合。今の女性と逆だよね。まず、波打ち際にいって、砂を両手で半円ずつ輪っかをかくように掘って、掘った土を真ん中に積んでいくと、周りは掘ってなくなって行くから、真ん中に砂の固まりができる。それを、ごそっと持ち上げる。水滴を落としながら丸く形を整えながら、陸側に移動して、乾いた目の細かい砂をかける。そうやって団子を作って、互いのをぶつけるんだ。他にはね、用水路から来た川が砂浜を横切って海に入っていくんだけど、途中で砂で堰き止めて、パイプを1本通すと、そこだけ水が通れるから、勢いよくだーって出てくるわけ。上側で何人かが入ってばしゃばしゃと魚を追うと逃げ場がなくなって、魚がね、パイプの中から出てくる。それを取って遊ぶんだよ。

 海では色々なものを採ったね。アイナメとか、ホタテとか、子供だからね。うちの釣りはね、その場で魚をさばいて焚火で焼いて食べるの。簡単だよ。ウロコをガラガラってとるでしょ。腹をばって開いて、内臓を取る。海に行くとき、お袋からおにぎりを2つ作ってもらって、魚と一緒に昼飯にしてね。ホタテとか牡蠣はね、養殖のいけすから陸まで運ぶときに、小さいのは捨てられたりするでしょ。そういうのが自然に大きくなったのを、採るわけさ。それから、砂浜からちょっと上がったところのジャガイモ畑にも行ったね。泳いだあとに「腹減ったな」って言いながら、収穫後の畑さ行って、掘り残しや小さくて放っておかれたイモをもらってね。

 うちらはお小遣いってのがもらえなかったけど、海にはたくさん出店が並んでいてね。釣り人に頼まれて釣りの餌を採ってきて、お駄賃もらったね。

 そうやって、毎日面白おかしく遊んで、夏休みの最後の日は泣く、と。宿題でね。俺はね、勉強は中ぐらいだったべなあ。でも学校も楽しくてね。仲が良かったね。もう面白おかしくて楽しくてさあ。なんで日曜日なんかあるのかなと思って、毎日さ学校行きたいってね。

 子供のころはね、ほんとに楽しかったね。大人になっちゃだめだよね、面白くない。何が面白くないって、子供のときには、だれが死んでも知らない人だったのさ。大人になったら知っている人が死んでいくんだよね。やっぱり大人っていやだなって思う。今度の津波もさ、今までこうやって遊んできたから、海が好きなのさ。津波が来たからって海を嫌になれっちゅうのは無理なんだよね。津波ってのは海のそばに住んでいれば、必ず来るものなんだよね。付き合っていかねばいけないものなんだよね。よく言うのは、やっぱり海が好き、と。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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