東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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よく言うのは、やっぱり海が好き、と。

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  • 話し手: 佐々木彰さん
  • 聞き手: 市川薫
  • 聞いた日: 2011年7月31日
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東京、そしてふたたび吉里吉里で

 小中学校の頃はそうやって、海で遊んでて、高校の時には、ヨット部だったから、また海の上にいたね。高校を卒業して、腕に職をつけてえなと思って訓練校に入ったのさ。で、本当は地元さ就職っていうのもあったんだけど、東京さ見てきたわけよ。やっぱり歴史年表で出てくるのって、東京、江戸でしょ。その場を生で見たいなって思って。大学さ行かせたと思って4年間って約束してね。

 会社のビルの設備工場と寮が西日暮里にあったのさ。若くて監督をやったけど、割に職人さんたちにかわいがられてね。あの頃は赤貧の貴公子って呼ばれていた。だいたい給料が安いんだもん。月の後半になると、飯食えるか食えねえかって感じになって、職人さん達が、うちに来てご飯食べろよ、飲めよって言ってくれて。で、給料もらうと、その職人さんに飲みに行きましょうって、連れていってね。月の後半にはまたお金がなくなる、というのを繰り返してね。でも無駄じゃなかったからね。

 4年たったら弟も東京さ出てきて、そのころ親父も府中にいたから、お袋が独りになったんだよ。で、帰ってこいの命令、召集がかかったのよ。それが24か25の時で、帰ってきて、船舶電装の仕事。船は中で生活もしてるでしょ。家と一緒で必ず電気は必要なわけ。船の中にコンセントつけたり、エンジンの発電機でおこした電気を各部署さ送ったり、そういう仕事って必ずついてくるのさ。それを20年やって。今は船の無線の仕事をしている。レーダー、無線機、魚群探知機とかの販売、施工、修理だね。新しい船つくるときには工事したり、港に入ってきたのを修理したりね。

 それからボーイスカウト、青年会がはじまったのさ。事業主がボーイスカウトの偉い方で、俺は小学校2年生から5年生頃までにボーイスカウトに入っていたから、お前はリーダーしろって言われてなった。公民館で1人で準備していたりすると、青年会の連中が隣で飲んでいて、最初は頭にきたのよ。でも結局そっちの方にも取り込まれて二足のわらじ。それから、26歳の時に岩手県青年の船っていう事業で、300人位で15日間船に乗って、議論したり、沖縄、フィリピン1泊ずつ行ったりしたんだけどね。その後、大槌町青年団体連絡協議会っていうグループに入って、その壮行会が嫁さんに初めて会った時だね。

 吉里吉里は団体が多いね。1丁目から4丁目まであって、4丁目は2つに分かれてて若葉会と育成会っていうの。あと消防団、青年会、母さん方の婦人会、老人クラブ、ボーイスカウトにスポ少(スポーツ少年団)。皆が必ずどこかにはまってるのさ。そしてそれらを束ねているのが公民館。皆少しずつ重なってっからさ、小学校のPTAの話が始まって、中学生のPTAの話になったり、全然関係ない集まりで急に消防団の話になったり。狭い中でいっぱい団体あるから、事務局やってる人たちってほぼ同じような人で。

 吉里吉里の行事?まず、掃除が多いね。丁目ごとや、お寺の草刈、砂浜の掃除があったりね。それから、町内の運動会が吉里吉里小学校のグラウンドで10月の第1週にある。参加?するする、酒飲むの。いや、行くとね、本部役員って言って、道具の出し入れや、テープを張ったり、ドンて鳴らしたりとかにまわされるの。実際に走ったりとかっていうのは、もっと足の速いやつだね。

 吉里吉里のお祭りはね、丁じるしって、神様のお供になる踊りで、鹿子踊り(ししおどり)、大神楽、虎舞の3つがある。それに加えて、各丁目から手踊りが1グループずつ、4つ出るでしょ。他に神社から神輿や道具持った人がいろいろ出るから、見る人がいないんです。

 大槌、釜石、宮古も、大船渡も、このあたりは踊りが多いんだよね。大槌の中でも、ここは吉里吉里虎舞、安渡(あんど)は安渡虎舞とか。厳密にいうと地域によって踊りが違うね。踊りはね、祭が近くなると、1週間くらい夜7時から8時くらいまで、練習があるんだよ。古い人たちが新しい人や子供たちに教える。好きでやってるんだけど、よく言えば伝承活動だよね。私は虎舞、他の人は鹿子踊りとかって1つに入ったらずっとその踊りを踊る感じだね。自然に子供も同じ踊りをやるから、家ごとにこの踊りって感じになっていくね。そうやってまたグループができて、グループ分けがこの地域の人は好きだね。

お祭りでは虎舞の笛を担当している

 俺はね、東京から帰ってきたときは、神輿担いでたんだけど、ちょっと体を悪くして。無理するなっていわれて、物を持って歩く担当をしていたんだけど、全然つまんなくてね。じゃあ、虎舞さ入るっかなって思って。吉里吉里では、虎舞の笛吹いている。「俺は笛ーっ」て感じで、人数は決まってないよ。だけどね、好きじゃないと笛って吹けないんだよ。割と特殊でね。それから、皆はずるいっていうんだけど、大槌の方では、鹿子踊りの笛を吹いている。いきさつはね、大槌の方で青年団が終わって波工房って劇団を作った。前に、豊かな海づくり大会っていう国の行事が大槌でやることになって、その100日前イベントで演劇をやってくれっていわれてさ。嫁さんの兄さんが演劇をやってたからね。それで、2本目の芝居の中に鹿子踊りがでてきたんだけど、それを見てたら、笛をやりたいって思ったんじゃないかな。最初は特別にお願いしたんだよ。そのために会議も開いてもらってね。最初は喧々囂々で、虎舞も鹿子踊りもやるのはけしからんっていうわけ。やっぱり、みんなプライド持っていて、ただの踊りや太鼓、笛じゃないわけね。今はみんな慣れたっけ。もう11年目だね。

 波工房はその後も、味噌作ったり、炭焼いたり色々やったよ。飲み会が多いけどね。炭焼きは、大槌の山の方の渋梨(しぶなし)っていうところで山を持っている専業農家さんにいろいろ聞いてね。ナラとかサクラとか切って、割って、炭窯をぶって。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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