東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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震災で価値観が変わった

大槌のために役立ちたい

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  • 話し手: 田中明博さん
  • 聞き手: 大崎智子
  • 聞いた日: 2011年9月3日
  • 027/101
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震災に遭って ―翌日?1ヶ月後「生きるのに、必死だった」

 で、いよいよ夜が明けて、吉里吉里に向かう車があったので、それに何人かで一緒に乗って来ました。吉里吉里に来て、最初吉里吉里は被害がないと思ったんですよ。吉里吉里の被害は、ローソンのあたりからだから、初め「あ、吉里吉里は残ったな」と思ったんです。でも、自分は線路の上にある実家に向かったので、行く途中で「あ、やっぱり吉里吉里もダメだ」ってわかりました。

 もともと家には、両親と自分の3人で住んでました。家族、親戚、全員が無事だとわかるまで、丸2日かかりました。実家が線路の上にあったので、そこがいちばん安全だってことで、家族と親戚20人で1ヶ月共同生活しました。たいへんでしたけどね、自分の身内、親戚は全員無事だったので、それだけでもすごいなぁと思います。

 その1ヶ月間は、とにかく生きるのに必死、食べるのに必死でした。将来は見えなかったです、なんも。とにかくどこかで食べ物を配っていたらもらいに行った。お水は井戸水とか湧き水とか汲んで来て、それをカセットコンロで煮沸して飲んでました。飲料水が届いたのは、3日?1週間くらいしてからでしたね。自分が思ったのは、水のありがたさですね、水がすべてですね。当然お風呂も入れなかったし、困ったのはトイレですね、水がいちばんたいへんでした。初めて飲んだ水は、兵庫県の明石市の水ですね。おいしかったですねぇ、忘れられないなぁ。

 ローソンさんの流されたペットボトルとか食べ物とかは、全部避難所に持って行きました。自分たちは住むところがあって、避難所の人たちは住むところがないので。自分たちよりもっと困ってる人たちがいると思って。食べ物の分配は地区ごとにしてました。おにぎり、パン、カップラーメンとか。いとこたちも自分の地区で食べ物をもらって来て、みんなで食べました。情報がないので、毎晩ラジオ聞きながら。それで初めて福島の原発のことも知ったんです。

 

震災の後 ―真剣に考えた「なんで生かされたんだろう?」

 それを1ヶ月間やってて、さすがに1ヶ月経つと、先を考えなきゃいけなくなる。最初はみんな同じなんですよ。津波はみんな平等じゃないですか。食べ物もみんな平等にもらったし。でも徐々に、仕事ある人は仕事に戻るじゃないですか。朝、行って来ますって行くじゃないですか。でも自分は…。すごくむなしくなったんですよ。仕事ある人は前向きになれますよね。ない人って落ち込むじゃないですか。すごかったですよ、自分のなかで。

 心で受けたもの、感じ方はそれぞれ違うと思いますよ。俺は、それこそ人生観が変わったっていうか。たくさん人が死んだじゃないですか。生きただけで幸せ者と思うのか、生きたことが逆に生き地獄なのか。自分みたいなのが生かされた。状況考えると、ぎりぎり生かされた、なんだろう?なんの意味があるんだろう?って。どう見ても、ほんとは俺が死ぬべきだったんじゃないかと。これは神様が俺を試してるんじゃないか?これも1つの試練なのかなぁって。そんなの考える余裕もないと思うんですけど、俺は考えました。

 そして思ったんです、じゃあ、生きたのなら生きてやろう、って。生きれっとこまで生きてみようって。だから朝ご飯食べたとき、これが最後のご飯だと思って食べました。今日だけ生きてやろう、って。夜になって夕ご飯食べれば、また明日になれば状況が変わるんじゃないかとか。よくなることはないんです、将来がないんですよ、あの時点では。でも、生きたいんですよね。そういうのを考えてましたね、4月5月は。毎晩夜になると。

 でもさすがに、これはまずい、状況は変わらないって。で、5月あたりから職安に通い出した。できれば大槌町の復興に携わるような仕事に就きたい、瓦礫の撤去でもなんでもしてやろうってと思って。でも、2ヶ月とか3ヶ月とかの臨時の仕事しかなくて、それじゃあ生きていけないなぁ、と思って。そしたら6月中旬にたまたま岩手日報で、シャンティ(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)の募集を見たんです。そして7月から採用でした。

 

現在 ―移動図書館の仕事「大槌のために役立ちたい」

 この仕事をやろうと思ったのも、大槌町の図書館に2年間勤めてましたから。大槌町の町がなくなったときに、何か大槌町のために役立ちたいって思って、生きた以上。シャンティが、大槌町でも移動図書館やるって聞いたので、「なら、これだ」と思いました。

 そんな簡単なものじゃないですけどね、実際はたいへんですよ、ほんとに。大槌のため、と思ってやってます。でも、自分自身のため、自分が将来を見出すためでもあります。ここでがんばって、もう1回、将来の設計を立ててみたいな、って。

 仕事は土日に移動図書館の巡回がありますけど、皆さんに会えるから、その笑顔を見れば、疲れは吹っ飛ぶんですよ。朝早く行って、どんなに夜遅く帰っても、笑ってる人の顔が見られるから。今日だって、たくさんの人が笑顔だった。この雨のなかですよ、この雨のなか人がたくさんの方が来て。ありがたいありがたい、ってみんな言いました。今日は大槌町を巡回しました。明日は陸前高田に行きます。

 どこも仮設住宅を回ってます。今日は3ヶ所回りました。大槌町の輪野(わの)ってところ、仮設が250戸あるところです。あと、三枚堂ってところ、そこは120戸くらいあります。最後は吉里吉里中学校のグラウンドです。3ヶ所って少なくないんですよ。遠野にある岩手事務所を朝9時に出ても、ここまで1時間40分くらいかかるんですよ。で、11時スタートですよ、1ヶ所につき1時間いるので、最後の吉里吉里中学校終わったのが、午後4時です。それから後片付けして、遠野の事務所に帰るのが6時近くですからね。それから明日の準備をして、反省会をして帰って来るので、3ヶ所が精一杯なんですよ。

 移動図書館の本は、新聞とかにシャンティの記事が載ると、使ってください、って送ってこられるんですね。それとBOOK・OFFさんからですね。あとは「3.11絵本プロジェクト」っていうのが盛岡にあるんですよ。いろんなところから、毎日寄贈されてきますね。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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