東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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吉里吉里の団結力を感じた

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  • 話し手: 松橋康弘さん
  • 聞き手: 中村駆
  • 聞いた日: 2011年7月9日
  • 028/101
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観光バスで

 会社は父親の代からです。一番初めはレンタカーをやってました。そのあとに観光バス。高校生くらいのときだったんで7年8年ぐらい前からです。

 うちの場合は観光地に行くっていうよりは送迎バスとか、部活動の遠征とかが多いですね。あんまり観光っていうのは来ないですね。

 車は津波で14台あった中の13台が流されました。他にレンタカー会社も別にやっていて、そこに3台残っていたので観光バスのほうに持ってきて、とりあえず4台で仕事を始めて、その後に他のバス会社からもらったり安く譲ってもらったりして、今は7台で仕事をやっています。

 今はスクールバスの仕事ですね。大槌町内で小学校がほとんど無くなったんで、1校しか残ってなくて、中学校も1校しか残ってません。その全部の学校への運転をしています。毎日バスを5台ずつ出しています。私はいつも浪板から吉里吉里まで運転しています。普通なら歩く距離なんですけど、瓦礫も多いし危ないからってことで、バスを出してます。本来なら小学校1年生でもみんな歩いて来てるんです。

 仕事は、ほとんど休んでないですね。中学校のスクールバスが始まったのが4月の中旬からですから、その辺から全然休みがないです。毎朝5時くらいに起きて仕事みたいな感じです。

 スクールバスに5台使ってあとの2台はあえて動かしてません。色んな仕事をやっていて、JRさんが止まった時に代行バスをやってたので、常に出せる車を置いてなきゃいけないんです。それで2台は予約を取らないようにやっています。

 JR釜石線と山田線の代行をしています。大雨とか、すごく風が強くて列車が止まった時に代行してますね。吉里吉里は全然電車が通ってないですね。大槌の鉄橋も流されて、無かったりするんで。電車は止まったままですね。ただ釜石から花巻の間とかは動いてるんで、そこの分で止まると電話がかかってきますね。

 JRさんもたまにしか来ないんですけど、津波の前は、大槌の食品加工会社の従業員の送迎バスをやってました。津波の日も送った人がいるんですよ。海の近くまで送っているんですけど、その人たちはみんな助かったって言ってました。従業員の人が地震の後すぐ、バスを出してくれってことで。電話も繋がんなかったんで、うちの会社に来ようとして、車で向かったらしいんです。こっちにくる間に津波がきて、その人たちは歩いて高台に逃げたんで、大丈夫だった。

 まだ落ち着いてはいない。会社の事務所が流されて、無いんで。今、仮設プレハブでやってるんで暑いし、狭いし。前と同じ所でやってるんで津波が怖いですよね。来たら、また流されるんで、車だけでも違うところに置きたいんですけど、やっぱ土地がないので。

 この前、テレビに3日間、密着取材された。岡山のバス会社がバスを譲ってくれたんですよ。その時にテレビに映りましたね。3日間来て撮影して3分にまとめられて。岡山のバス会社は、もう車検も受けてすぐ乗れる状態にして持ってきてくれたんで、岡山ナンバーを岩手ナンバーにするだけでOKだったんで、すぐに使えました。4月の29日とかに持ってきてもらって、5月の連休明けからすぐバスに出すことになって、そこから毎日ですね。あと、東京の西武バスってライオンズの会社です。合計で3台ですね。それでもまだまだ足りないです。

 今日は普通のバスの送迎ですね、運転手が来るんでバスを出してやんなきゃいけなくて。明日もお葬式のバスの仕事も入っています。お葬式の送迎バスも震災前までは結構やってたんですけど、今は少なくなりました。津波ではなく普通に亡くなった人は普通に葬式やってるみたいなんですけど、あんまり大きくはやらないみたいで、今までは1週間に3回くらいずつお葬式のバスの仕事はあったんですけど、今は1か月に2、3回。

 

落ち着いてきて今

 家が整備工場もやってるんで、今年整備士の免許を取る予定だったんですよ。その試験が3月20日だったんですよ。3月11日に震災でこうなったんで、受けないかなって思ったんですけど。通っていた学校の人が来て受けてくれって言われて、そして受けに行ってきたんですよ。初めは、まぁいいやと思ったんですね。こんな状態になったし、勉強もしないで行ったんで。でも意外と簡単だったんで、どうにか受かりました。

 岩手は試験の延期は無かったです。宮城はあったような話ですけど。受けれなかった人のためにもう1回テストをやったみたいですけどね。そっちにしてもらいたかったんですけど、とりあえず受けに来いって言われて。

 近所に同級生が1人いて、その人のでっかい鉄筋の家も波を被ったんですけど形が残ってるんですよ。そこにひっかかってた写真が10枚くらいですかね、その人が持ってきてくれました。七五三のときの写真とか。でも本当に驚くことに、あとは何も出てこないんですね。

 飲み屋も無くなったんで。居酒屋なんか、釜石なんかも混んでるみたいですよ。予約をしないと入れない。先週も友達と飲みに行くかって行ったんですけど予約が取れなくて、結局お好み焼き屋で飲んで帰ってきました。

 こうなっても遊びたいときは遊びたいじゃないですか。

 

【プロフィール】

話し手:松橋康弘さん

吉里吉里に生まれ、室蘭の大学に進学し勉強した。2年前吉里吉里に戻り、父親が営む観光バス会社で仕事をしている。

聞き手:中村駆

東京農業大学地域環境科学部造園科学科1年

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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