東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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郵便局長として暮らす第一の故郷“吉里吉里”

中村和夫さん
  • 話し手: 中村和夫さん
  • 聞き手: 吉田麻美子
  • 聞いた日: 2011年7月9日
  • 030/101
ページ:3

吉里吉里のまちづくり

 子どもたちの教育振興運動っていうのが盛んなんですよ、この吉里吉里地域っていうのは。地域の子どもをね、育てようっていう。学校行事でも何でも、とにかくなんでも地域で支えていく。ここはそういうところですね。

 親が子どもを育てるのはもちろんですけど、地域でも育てていくという気持ちです。あいさつ運動でも、子どもたちだけするんじゃなくて、地域の人たちもとにかく声をかける。我が子だけじゃなくて、よその子も常々地域で見てる。間違った方向に子どもたちが走らないようにする。そういった活動も、一生懸命取り組んでる地域です。

 この震災、災害で、この吉里吉里地域がどのようになっていくのかね。高台があるから被害を受けない建物が6割ぐらいは残ってるような気がするんです。たけども下の方は全然ダメですから、その辺はどのような形になるのか。やっぱりここにもう一度住みたいって人が多いんだろうと思うんですよね。やむなく、ここを出なきゃならないって人もいるでしょうけど。そういったことを考えると、一つ寂しいですよね。だから、何としても、少しでも前の吉里吉里地域に戻るように、やっぱりみんなで力を合わせて頑張るしかないと思ってるんですよね。みんなそういう思いでいると思いますよ。少しでも早く、元の吉里吉里に、1日でも早くね、戻ってほしい、戻りたい、そんな思いですよね。

 津波が来たところに居住できないとなると、そこのひとは、どこに住めばいいのか。高台と言っても山を切り崩して、どうやって平地にしていくのか。自然は自然で大事だしね。海だって自然の1つとして大事だから。人と海が共存できるようなまちづくりっていうのは、どのようにしてったらいいのか。

 やっぱり漁業をやってる人にとって、海からうんと離れたところに家を構えて、海へ出てくるっていうのは違うと思うんですよ。私は漁業の経験はないから、わからないですけども。でもやっぱり、漁業する人たちは海のそばにいて漁業、農業する人たちは田んぼのあるとこにいて農業。サラリーマンのように、車で通って漁業する、農業するっていうのでは…ね。農業とか漁業とかがやっていけるようなまちづくりっていうのは、当然やらないと。みんな若い人たちが町の方へ出て行って、サラリーマンでいいっていうわけにはいかないですもんね。農業は農業、漁業は漁業で大事だし、残してかなきゃならないっていうね。それでもって私たちが生活できてる部分もあるわけだし。

 今回の震災は、無駄にしちゃいけないと思いますね。これだけの犠牲者を出したわけですから。これから、50年後100年後に向かって、同じような災害を繰り返さないように、孫たちが安心して暮らせるような日本になっててほしいなと思いますね。

 

震災をとおして伝えたいこと

 ほんとにしみじみ思うのは、警察にしろ、自衛隊にしろ、それからまたボランティアの人には、ほんとに頭の下がる思いです。いつも見てすごいもんだなと、やっぱりみんなの力って大きいんだなと、そう思います。来て一生懸命やっていただいてる姿見ると、ただただ、感謝の気持ちでいっぱいですね。なかなか、やれるようで、できるもんじゃないと思うんですけどね。特にボランティアのみなさんなんか、一生懸命作業してる姿見るとね、感謝でいっぱいですよ。私も、郵便局のなくなったところのね、ボランティアの人にね、2日程手伝っていただいて、がれきの撤去だとかやっていただきました。跡地から見つけてもらったものもあったりしてね。ほんとに、あの人たちの一生懸命さっていうのは、私は一生忘れないですね。有り難いもんだな、と思いますよね。だから、自分でおんなじことやれっつっても、なかなかできないなと思います。

 時間が経過すると、「震災は忘れた頃にやってくる」って良く言うけど、風化させないで伝えてってもらいたいと思います。もちろん1年や2年では風化しないでしょうけども。やはり、20年経とうと30年経とうと、100年経とうと風化させないで、同じような災害が起きたときに、一人でも犠牲者を出さないように。二度と同じような思いをする人がないようにね。一人ひとりがほんとに真剣になって考えていかなきゃならないんじゃないかなってつくづく思いましたね。国がやらなきゃなんない、政治がやらなきゃなんないし、地域がやらなきゃなんない、自治体がやらなきゃなんないってとこもあるでしょうけども、最終的には、一人ひとりですね。日本に住んでる人、一人ひとりがやらなきゃ。頼るんじゃなくて、一人ひとりが力を出してかなきゃならない、と思いますね。

 それが、不幸にして犠牲になった、亡くなった方たちが、それこそ一番望んでることじゃないでしょうかね。いまだに、遺体も上がらないって方も多数いますからね。そういう人たちのためにも、今残ったひとたちがね、これからのまちづくり、社会づくり、日本っていう国づくりを、頑張っていかなきゃと思いますね。

 

【プロフィール】

話し手:中村和夫さん

岩手県遠野生まれ。郵便局員として、東京、宮城、岩手の各地に勤務し、約30年前から奥さんの生まれである岩手県大槌町吉里吉里地区の郵便局長として勤務。

聞き手:吉田麻美子

静岡市役所勤務。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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