東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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6代目の想い。会社を残したい

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  • 話し手: 三国知彦さん
  • 聞き手: 飯田雅子
  • 聞いた日: 2011年8月27日
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石巻にUターン

 名前は三国知彦(みくにともひこ)。昭和49年1月8日生まれです。今回の震災で社長だった父が亡くなったので、いまは自分が三国商店の6代目です。

 先祖代々渡波(わたのは)地区に住んでいて、こうした魚関係の仕事は明治時代からやっています。株式会社にしたのは昭和22年です。3年くらい前に結婚して今の東松島市に移るまでは、渡波の実家に住んでいました。会社も渡波地区の方にありました。

 大学は東京水産大学に入りました。今は名前が変わって東京海洋大学です。学生の間は横浜の鶴見に、勤めてからは埼玉県越谷や練馬に住んでいました。卒業してからは宝幸水産という会社に就職して、そこでちょうど3年働きました。

 いずれ家業を継ぐとは思っていましたが、就職した当時は経験なり人脈を考えて最低でも10年と考えていたんですけれど、考えていたよりもずっと早く戻ってきました。戻った理由は、水産業が石巻も全体的に停滞していた時期でうちの会社もなかなか新しいことにとりかかれないので、父親ひとりの考えだけではこの先厳しいなと思って。あと5年経つと手遅れということも考えられるので、会社を存続させるためには早く戻っていろいろ新しいことやったほうがいいだろうと思い、11年くらい前に戻ってきました。

 

家業を継ぐ

 実家の今までのやり方が古いと一番感じたことは機械化されていないことですね。最初の投資という部分では金額が張るんですけど。技術の進歩のおかげで、昔は人がやっていたことも今は機械でやれることがあります。そういった機械化が一番遅れているなって思いましたね。他の会社から比べればまだまだ遅れているものの、僕が戻ってから機械化はけっこう進めていました。それと販売先の新規開拓ってところですか。営業なんかも、従来通りっていうのがありがちで。その辺も刺激があった方がいいかなと思って、石巻に戻ることを考えました。

 たとえば40年前はサンマの大きさを選別するのに、人が並んでいるところにサンマを流すんですよ。大きい、小さい、中くらいとか、人が見た目で分けていくんですよね。機械で測れるようになったのは30年くらい前からで、サンマを並べると、全部自動的に選別されるんです。サンマっていうのは10gとかの差で振り分けていったりするんです。女工さんは、手で持てば何グラムくらいってのがわかるんですよね。それでも機械の方が早いし、誰でも、今日来た人でもできる。それに正確さも、機械は疲れないので。女工さんでも、朝と夕方では正確さが全然違ってしまいます。

 水産と一言でいってもいろんな業種がありますが、うちの仕事は冷凍が多いです。石巻と女川に揚がった魚を買ってサイズの選別をしたり、冷凍してダンボールに入れて、缶詰め、開き、塩サバ、しめサバを作る会社など、加工屋さんに原料として販売するんです。

 あとは、輸出が多いんですよ。うちが扱っている魚の種類は主にサバで、あとはスケソウ(スケトウダラ)、真鱈、アジ、イワシ・・、この辺かな。サンマも若干やりますけどね。

 会社の取引先は50軒くらいで、震災当時は従業員10人でした。男性4人が社員で、女性のパートが6人。パートさんの仕事は主に選別と箱詰め。あと包丁を使う作業もあります。

 

仕事のおもしろさ

 仕事で一番おもしろいのは、自分で値段をつけられること。普段の生活では、消費者として値段がついている商品を買ったりするわけですよね。僕らの仕入れの時には値段がなくて、自分で値段をつけるんです。値段の付け方は何十年もやっている人でも、みんな様々で、たとえばある魚を50円じゃないと買わないという人がいても、一方で同じものを100円で買う人がいるとか。まあそういったところが一番おもしろいですかね。みんな買わないところを買って利益を上げたりとか。

 魚も様々なところがおもしろいんですよ、おんなじ船で買ってきた魚でも微妙に鮮度やサイズが違います。品質も統一されているわけじゃないですし、季節でも全然違います。

 毎日違うから、飽きるってことがないですね。買えない時や魚が揚がらないときもあるので必ずしも毎日市場から買うわけではないんですが、年間をとおして290日くらいある市場の営業日のうち、7割くらいの日は仕入れがあります。

 水産の仕事をしていると市場と同じ日に休むような感じなので、休みは日曜日、年末年始やGWくらいですね。

 市場の仕入れ方法にはセリと入札がありますが、僕が仕入れる魚はほとんど入札です。値段を紙に書いて一番高い人から順番に買っていく方法です。まとまった量の魚を仕入れるからセリで少しずつ売っていたんじゃ時間がかかってしょうがないので、入札で、一発勝負でやるような感じです。セリで販売するのは、バットに少しずつ並んでいるような量が少ない場合が多いですね。

 仕入れる量はその日によって様々で、多くて40トンくらい。少なくて1トンくらいの時もあります。市場での1回の入札の量は、1トンから数百トンということもあります。ただ入札が300だからといって、一人が300トン買わなくてもいいんです。ある人は10トン。また他の人は30トン買うとか。

 ただ提示した価格が高い順番から持って行くことになるので、もしも最初に300トン入札してしまう人がいたら全部持って行かれてしまうし、逆に低い価格を提示したとしても、まわってくることもある。その辺は勝負ですね。

 魚はそれぞれトラックの荷台に乗っているんですけれど、その車によっても鮮度などに微妙な違いがあります。基本的にはいいものから先になくなっていくので先に落とした人の方が有利なこともありますが、狙っていたものを誰も持って行かなかったりすることもあります。

 



■ 宮城県石巻市

宮城県石巻
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