東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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6代目の想い。会社を残したい

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  • 話し手: 三国知彦さん
  • 聞き手: 飯田雅子
  • 聞いた日: 2011年8月27日
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自給率の問題

 本当に日本は、国民ひとりひとりが考えなおした方がいいと思いますね。そういう意味では、これはいいきっかけだと思うんです。食料も、日本は捨てている量がすごいですから、まずはそのへんを見直さないと。魚の場合は、捨てるまでいかなくても、水揚げされた魚で、食用向けとして日本人の口に入るのはかなり少ないんじゃないかな。ほとんどが輸出だったり、養殖の餌とか。

 たとえば日本国内では大きいサバしか売れないので、輸出されて日本人以外の胃袋におさまる方が多いはず。小さくても、十分食べられるんですよ。ちょうど、昨日スーパーで長崎県産五島対馬海域のしめサバを買ったんです。これはすごい小さいサイズで、それをしめサバにすることは今までなかったんですよ。大体しめサバってもう少し規格の大きいやつが加工されるので。この小さいサバを食用向けに利用するっていうのは、やっぱり資源を大事にするっていう観点があるんじゃないかなと思って。味もみたくて試しに買ってみたんです。サバは三陸だと夏から年内までが獲れる時期で、旬は秋サバって言われる9、10、11月。長崎の方だと寒サバといわれて12月、1月、2月がおいしい。

 日本全体でみれば、ほぼ年間を通して水揚げはあると思います。サバは世界中でも食べますね。うちからもタイやフィリピンに輸出しています。日本の水産資源はもう少し国内の食料に向いてもいいと思います。

 

一次産業の賃金

 スーパーが売価を設定するので、製品の単価は安いですね。ある商品を300円で売る場合、スーパーは確実な利益をとって卸しや中間マージンをはさみ、われわれ産地市場の加工屋にしわ寄せがくることになります。たとえばスーパーが300円で売るためには、うちの仕入れは100円ぐらいになるかな。とはいえ市場で競い合って買うから、100円でほしいところを120円じゃないと仕入れることができない場合もでてきます。もう少し売価が高ければそれなりの利益も得られるのですが。

 食品をつくる一次産業の収入が安すぎるっていうのは思いますね。苦労しているわりには。わざわざ外国から食糧をたくさん買わなくても、日本に食べ物あるんだから。国内のものを消費することで、結果的には自分も豊かになって、そうやって経済がまわるってことを多くの人が意識できるといいですね。国内である程度経済を立て直さないと。

 

震災前の生活と仕事

 ここから渡波地区までは朝だと車で20分、昼だと30分かかります。一番最初のセリが6時からなので、朝は5時くらいに出るので道はほとんど混みません。5時くらいだと健康にいい生活のような感じがしてちょうどいいんですよね。市場は広いので、父と僕で一緒に相談しながら買う時もあれば、手わけしてそれぞれ仕入れるときもありました。仕入れはだいたい7時くらいに終わるんですけど、日によっては日中船が入ってくることもあるし、本当に遅いと午後3時頃に入船することもあります。

 忙しい時は1日に4回も5回も市場と工場を往復したり、半日くらいは市場にいるような感じになりますね。

 その後は、毎日変わる現場の処理方法に合わせてラインを組み替える仕事があります。人の配置とかの段取り。戻れない時は電話で指示することもあります。あとは出荷もありますから、冷蔵庫の方で出荷が間違いないか確認したり。魚の処理が終われば、あとは事務処理とか。

 家族は、両親と弟の家族4人で、事務は母親と弟が、現場も事務もという感じでやっていたので。弟は実家で暮らしていたんですが、今は仙台と石巻に部屋を借りて、行ったり来たりといった感じです。

 

これからの仕事について

 再建するとしたら、今後も施設や会社の場所は沿岸部しかないですね。さっきも言ったように市場から魚を買って往復することを考えると、やっぱり沿岸部の方がいいんです。あとは、水も大量に使うので排水です。住宅が近いと騒音も問題になりますしね。まあ、なんだかんだ言って、沿岸部に建てるしかないんですよね。

 避難経路をしっかり確立すれば、津波は大丈夫だと思うんです。問題はせっかくお金をかけて建てた建物が壊れるっていうのはありますけどね。これからのことはまだ見通しがたっていないのですが、補助金がもらえれば規模が小さくても、もう1回冷蔵庫を建てたり、再建の方向に向かうと思います。補助金の額が小さければ、水産業のなかでも最初の投資があまりかからない仕事をしようかなと。投資金額は、冷蔵庫だと最初にかかるのが億の単位なんです。まだ出るのかどうかもわからないんですけども、少なくても補助金が出るなら、やってみようかなと。これからも水産業に携わり、会社を残したいというのが今の一番の気持ちです。

 

【プロフィール】

話し手:三国知彦さん

水産加工の三国商店6代目。3月11日の震災時に津波で事務所とともに父親を亡くす。現在は東松島市で家族(妻、子供2人)と暮らしながら、会社の再建に向けて準備中。

聞き手:飯田雅子

「週末農風」主催者

 



■ 宮城県石巻市

宮城県石巻
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