東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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ワカメ一面に広げてた、あの砂浜はどこへ?

思い出したくない、でも、忘れちゃいけないあの日

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  • 話し手: 釜石澄子さん
  • 聞き手: 辻るり
  • 聞いた日: 2011年9月23日
  • 039/101
ページ:2

年寄りの津波になった時の話、やっぱり聞いていてよかった

 本当に、前の津波の時には、そこは大丈夫だってことでやってたんですけど、下の方でも、ああ、ここも危ないからだめだから、もうちっと高いとこさ逃げなくっちゃってことで、逃げたんですけども。お年寄りの津波になった時の話が、自分は頭に残ってたもんですから。一緒にいた人たちが、津波見たことも、そういう話も聞いたことも、関係のない山手の方の人だったもんですから。自分は逃げる時に、川沿いとか真ん前に逃げないで、とにかく5cmでも10cmでも高い所があったら高い所逃げろって言われてたので、なんかね、道路のまま逃げたら怖いなと思ったんです。

 すぐ見たら、山道だったの。まっすぐ山に道路が続いてたので、こっちに逃げようっていうんで。それで、みんなそっちに逃げたりした。やっぱり道路沿い行った人もあるけど、そちらはとにかくこっち、って自分先に立って、山にいました。

 やっぱり聞いていてよかったなと思いました。

 

命があっただけでも良かった

 一晩、どうしようかと思いました。町が火事になったでしょ。そしたら、赤浜の方も火事になったんですよね。ちょうど、その間の所にいたので、挟まれて、こっちに来なきゃいいなと思って。ちょうど親戚の家が大丈夫だったので、工場の人と一緒に、そこに一晩泊めてもらいました。

 うちのお父さんが、山を越えて訪ねて来てくれました。

 なんかね、1回探しに行ったら探しきれなくて(家に)戻ったら、母さんに「年寄りが水に浸かってだったのに助かったんだから、疲れたなんて言ってないで、おまえ行ってから見て探してこい」って。何回も何回も歩いて、すっかりもう、げそっとしてました。ちょうど鉄道の上の方に、母さんの妹の家がありますので、そこで、朝に炊いたご飯が残ってたみたいで、おにぎりを2つ作ってもらって、持たされて。

 そして次の日の朝ですね、ちょうど。運が良かったのかな。赤浜の山を越えて、まだ火がくすぶっている所は、あっつい所を来たみたいですけど。山を越えて、畑とか藪を越えて、ちょうどこの辺だったらば、惣川(そうかわ)出るかもしれないっていうんで降りてきたみたいです。道っていわれるところを通らずに、とりあえずここで降りれば、って感じで。

 そして、そこのちょうど降りたところに、私のいた家があったもんで。道路端だったもんで、一緒に働いてる人が、「釜石さんの旦那さんでないの?」って言うんで、「ええっ」て言って(笑)。玄関開ければすぐそこに、どこかで見た顔が。ふふふふふ。

 「これで見つけなかったから、おまえ、今度はどこさ行ったらいいかわかんなかった」って。圏外になって電話通じないし。連絡のしようがないんですもんね。

 顔見てホッとしても、家は?ばあちゃんは?って。「家は?」「ない」って。ふふふふふ。「ばあちゃんは?」「うーん、大丈夫」って。地震があって逃げた時に、すぐに電話かけても通じないんですもんね。とにかく古い家だったもんですから、ああ、じゃあもう家潰れたんだと思って。ずっとずっと、携帯かけてたんですけど、通じないんですもん。そしたら家は、地震では大丈夫だったんだけどって。津波で、ないって。

 その時は、命があっただけでもいいかって。はははははは。ねぇ。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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