東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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今自分にできる最大限のことを行動する

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  • 話し手: 芳賀光さん
  • 聞き手: 高附彩
  • 聞いた日: 2011年7月31日
  • 042/101
ページ:2

これからをどう考えるか

 地震があったからこうしよう、ああしよう、という風には変われない。地震のあと、たくさん泣いたけど本気で泣けない。わかります? 涙は出るけど、こらえてしまう。本当はいっぱい泣きたい。でも飲み込んでしまう。涙は流すけれど本気では泣けない自分がいる。泣いている場合じゃないと思っているのかもしれないし、まだ泣くのは早いと思っているのかもしれないし、自然とこらえてしまう。不思議ですね、それは。

 今回の津波を経験して、人の性格がわかった。根が見えた。普段何にもしない人でもやっぱ違うなって思ったり。知らない人たちも協力的だったり、自分にできる役割を考えた。店や釣具屋が津波で流されて、被害は4、5千万円。だけど、自然にはかなわないし、暗くなってもしょうがないし、家族が生きている。いろいろなくなってもしょうがないけど、家族がいるから良かった。確かに今忙しいけど、お墓も大事だし、どんなに忙しくても仕事は受ける。自分の使命だと思っている。納骨にもなるべく立ち会う。吉里吉里のために、誰がやるんだ、って思うし。

 理屈が嫌いで、喋るよりやれよ、と。思うより行動するという考えの地域柄。声をかけあう、挨拶をするようにしている。それができると、人とつながる。今自分に出来ることをする、それだけ。普段から中学生にも、勝てばいいわけじゃない、今自分がやらなくていつ誰がやるって思って、今自分にできる最大限のことをするようにと言っている。とにかく地域に元気を与えるようにして、あきらめない。俺は中学生にとっては兄貴的な存在で、もともと大人ぶって言う人たちは大嫌いだったから、立派ぶらないし、話も聞くし、近くにいるようにする。

 津波が来て人生は変わっても、基本的なことは全然変わらない。変わったところといえば、驚かなくなった。これ以上のことはないから、あのどん底を味わっているから、あの思いも経験しているから、あとは受け入れるしかない。ある意味、良い意味で、どう表現して良いかわからないけれど、自然にはかなわないっていうのを改めて痛感させられた。一番かわいそうなのは、子供達が海に近づかないんですよ。俺らが小さい頃は、釣りっこしたり、泳いだりその辺の田んぼで遊んだり、っていうのが普通だったんですけど、この状況だから仕方ないけど、海を早く安全な場所にしたいし、釣りもまたやりたいなって思いがある。子供がまだ2歳だけど、海を怖いと思ったり、海の楽しさを知らずに育ってしまうのはちょっと残念。

海面は元通りの穏やかさになっている

 海の町、浜の町を復活させる。浜に活気がないと街が静か。漁師の町だから。やっぱり漁師が元気が良くなくちゃ。砂浜もなくなってしまった今でも、自分は海は好きだし行きたいし、怖い思いをたくさんしても、楽しい思いのほうが元気になるし、思い出す。確かに津波は怖かったし全てを奪っていったけれど、でも今は普通なんですよ。元通りの海面。何なんだろうな、って。でもやっぱ魚も食べたいし、きれいなんですよ。

 

【プロフィール】

話し手:芳賀光さん

吉里吉里で生まれて釜石でサラリーマンを経験後、24歳で石材店兼釣具店を開店。中学校の野球コーチも行う。店舗は津波で罹災するが、現在も石材店の仕事を使命と思って誠心誠意地域のために働いている。

聞き手:高附彩

国連大学高等研究所 SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ事務局 プログラムオフィサー

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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