東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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生きることがしごとだね

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  • 話し手: 平野勝雄さん
  • 聞き手: 木村璃香
  • 聞いた日: 2011年9月23日
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 名前は平野勝雄(ひらのかつお)です。昭和11年5月17日生まれの75歳です。職業はそうだな、昔は魚を殺す、漁師。42歳ころまでかなぁ。あとその後、今の運搬船っていうやつだね。42歳からねぇ、58歳まで。そのあとは退職して、ぷらぷらぷらぷら(笑)。子どもは長男と次男と長女で3人で、みんな元気にしてます。

 

子どもの頃から漁師

 ずっと吉里吉里だから。生まれたときから吉里吉里。おれたちは、ほれ、ちょうど終戦になったのは小学生ぐらいだからね。だから、子どもったってね、小学校に行った記憶がほとんどないくらいだから。食べるもんがないから、もう、10歳か11歳のときから沖行ってイカ釣る。それからずーっと船に乗っておった。だから、小学校の卒業証書もないし中学校の証書もない。ほとんど学校行ってなかったかも分からん。行っておったろうけど、行って寝ておったんじゃないか、疲れて(笑)。中学校入学したのかの記憶もない。兄弟は9人だからさ。それの長男だから。親父はだいぼうって、昔の言い方で親方のことだね。定置網の親方しておったけど、なんも漁のことは教えてくれんかった。自分で全部。イカ釣りは2、3年でやめて。船で出かけられるかぎり、なんでもやりました。どこでも行った。ひとつの船に15、6人ぐらい人が乗ってるから、みんなそれぞれ仕事しているのを、見て覚える。誰も教えない。人の仕事、見て覚える。

 

イカ釣りと遠洋漁業

 網にてんぐす、ナイロンに針をつけた1mぐらいのイカ針をいっぱいつけて、手で巻いたり、あとは電動で機械でやったり。まあね、1回釣って一杯になって、もう1回戻ってまた沖に出たりってこともあったんです。夕方3時ぐらいに出て行って、夜明けないうちに帰ってきて。夜の商売だから、イカ釣りは。夜海に出て、朝帰ってくる。持って帰ってきたのを今度、ばあちゃんが洗って干してた。ばあちゃんはイカ割りって言って、イカ釣ってきたのを割っておったからね。割るって、裂くってことね。かいで、わたを取って洗って、干して。そういうことをやっておったがす。割って干したら干物になります。干しイカってやつだな。今でもあるわな。ここのイカ釣りの船は小さいんだ。7、8トンぐらいかな。10トン未満だから。

 サケマスは30トンぐらいはあったんかな。マグロは250トンあった。獲ったらマイナス50度の温度で凍らせて持って帰ってくる。あれ、全部3枚おろしっていって、骨取っておろしにして持ってきたり、あと、丸で持ってきたり。ハッチって言うんだけど、倉庫みたいな冷蔵庫が船には全部、魚を凍らして積むようにできてる。7か月も8か月も貯めて持って帰ってくるんだから、どれぐらい入るのかはよう分からん。漁は楽しいっちゅうことはないよな。辛いよ。漁出たらしばらく家には帰れないし。サケマスは2か月か3か月ぐらい、出たまんま。マグロに行ったときは8か月帰ってない。毎日、寝るのは何時間もないんだべな。3時間か4時間、寝れるかなあ。港には油補給でいっぺんぐらいしか寄らんし。給料は安いもんな。漁師だけでは金にならん。水揚げの何パーセントってもらうから。だいたい3%ぐらいかな、それをみんなで分配するんだから。そのころはね、この辺も景気がよかったから。イカが釣れて、景気がよかった。今はもう、漁師もだめですけどね。

 

漁船から運搬船へ

 42歳に運搬船に切り替えた。ばあちゃんが、漁師でもご飯食われないから、行ってこいって(笑)。だからね、東京、名古屋、大阪、博多、九州、日本海、どっこも歩いてきました。なんっでも運びました。マツダの車両船で、車を運んで北海道まで持ってきたり。どっこにも持って行きましたね。会社は大阪の弁天町にありました。運搬船に行っても、1年に1回しか帰ってこなかった。あと11か月は帰ってこない。次の荷物をどこで積むかによって、寄る場所が違うしね。ほとんどどっこも歩いたね。北海道苫小牧、函館、釧路。西は博多、鹿児島。秋田、新潟、あと富山にも行った。乗っておった運搬船は3,700トンとか。いろいろな船、大きいのから小さいのまで、会社によって、ほれ、帰ってくると次に乗るのは別の船で行くからね。運ぶものによって船が変わるから。

 42歳から58歳まで、人の世話になったんです。漁師でご飯食えないから。そのころはあまり漁もなかったから。何一つ楽なことない。だけどやっぱ生きるためだ。金はかかる。漁師だからなんでもやります。生きてることが仕事だね。食うため、生きるため。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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