東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

暮らしを語り、想いをつなぐ。

お問い合わせ

生きることがしごとだね

044-top
  • 話し手: 平野勝雄さん
  • 聞き手: 木村璃香
  • 聞いた日: 2011年9月23日
  • 043/101
ページ:2

はなっこが芽を出すのが好き

 趣味はいっぱいある。盆栽好きで、自分で山から採ってきて、50年ぐらいかけて育てて大きくして。でも全部流されてしまいました。50鉢ぐらいあったね。あとはね、木の流木採ってきて、磨いて、いっぱい飾ってた。だいぶあったね。全部流されたけど。うん。なんも残らん。あの更地に家があったんですよ。

 海も山もあんまり行ったりして遊ばなかったね。今は山好きだからね。山菜好きには、山菜採るのが楽しみ。今でも春、5月ごろかな。あとは、海も好きだから。釣りっこが好きでね。楽しみで。今でもちょくちょく、波がないと行きます。食べる分ぐらいは取ってきます。どこへ行っても、生まれ育った場所がいちばんいいね。春がいちばんいい。はなっこ芽出してくるからね、面白い。津波に流されてなかったら、今は彼岸花がいっぱい咲いてる。育てておったからね、毎年100ぐらいは咲くんよ。みんな津波で死んでしまったけどね。

 

上さ上がってくるの、流れていくのを見たの

 テレビ見てたら地震が来たの。今まで初めてだもんね、あんな地震って。ばあさんが歩けなかったの、全然。脳梗塞で。今はトイレ行くぐらいは歩けるようになったけど。地震の時、全然歩けなかった。トイレ行って立ってるのさえできなかったから。押し車にとしがせて(乗せて)、あの坂を後ろから押して。無理くり歩かせて。小学校まで押して上がった。そしたらね、小学校から見たけね、津波がね、屋根の上…。上から見てたの。発砲スチロールが浮かんで白くなって見えたったからね。いろんなものが浮かんで。流れていくのを見たの。上さ上がってくるの。そのまま家にいたら、家と一緒に流されたったの。家さおったら全部流されたもんだから。うん。だって一番先にやらなきゃだもん。着の身着のままで。分かるっていうよりね、ああ、もう5分10分以内に必ず津波が来るよって、ばあちゃん早く逃げようって。押してさ。分かるっていうより、感じて、逃げた。だからね。小学校の上で見ておったんだけどね、悲しいも悔しいもなんもなかった。ああああって言ってるうちに全部なくなったから。ね、もう。知ってる人たちは亡くなったから。みんな声かけてきたんだけど誰も逃げなかったの。みんな避難せんかったの。うーん、みんな大丈夫だって。だから、亡くなった。だいぶ亡くなった。海近いから。

 

せめて、ばあさんとふたりで住めれば

 仮設に入ったのは7月の3日だったと思います。それまではずっと体育館と小学校とね。あらかたもうちょっとで3か月になるね。顔見知りは並びにおるからね。向かいには姉貴がおる。まあたいてい知っている人たちだね、この辺は。不便っていったってどうしようもないけどね。だって行くところないんだもん。でも、できればね、元のところに戻りたいです。息子のとこ行く気もないしね。行ったってしょうがない。これからどうなるか分からんけど、でも、山切り崩して高台ったって、雨降ったら災害怖いよ。海より怖いよ。逃げるとこねえ。だからね、なんとか今のところ住めればよいんだけど。まあ、ここ5、6年のうちに住めんかったらもう、もう帰れんだろ。生きてるかどうかも分からんしな。でも、それは分からんですよ。帰れるんか、帰れんのか分からん。だからどこ行くかも分からん。せめてね、大きい家じゃなくていいから、ばあさんとふたりで住めるだけの家がなんとかなればなあと思うんだけど。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
「聞き書き」とは 詳細はこちら 一覧はこちら