東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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生きることがしごとだね

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  • 話し手: 平野勝雄さん
  • 聞き手: 木村璃香
  • 聞いた日: 2011年9月23日
  • 043/101
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あたりとなり

 やればできるんだよね。もう1回。でもね、都会の人間と違って、田舎の人間は親切かもわからん。山へ行って山菜採ってきてもね、食べるくらい置いて全部そのへんに分ける。今でもそうだよ。魚を釣ってくるとね、自分が食うのは置いて、隣に分けてやるよ。よくみんな漁さ行ってるから、イカなんかそっちを持ってきてもらう。今でもちょくちょくもらって食べるよ。都会の人はそういうことはあんまりしないだろうけど、田舎は、みんなでお互いにやったり取ったりして食べるよ。うん、ずっと昔から。そういう習慣はあります。おれたちもそうだもん。野菜作ってもね、はい、そっちは何本、こっちは何本ってみんなであたりとなり(隣近所)に。親戚兄弟は遠いけども、あたりとなりは大事にします。

 震災の後もね。ボランティアっちゅうんか、来てくれてね。1週間のうちに4回も会って、元気づけられたから感謝の気持ちでね、都会の人間さもサンマ30匹送ったけど、分けたかどうか分からんけどね。もうこの後会う人でもないんだから、無理してやらんでもいいんだけどさ、でも人ってそんなもんじゃないよね。縁があってその人に会ったんだもん。縁があって会っても、離れればみんな忘れてしまうんだもん。避難しているときは、何十人何百人の人と会っても、心に残らない人もおるんだもんね。だから、その中で気が合う人は大事にしたいなと思ってる。ただ、食べさせたいなという気持ちでやったんであって。向こうもわざわざ大阪から来てくれたんだから。大事にしたいものは大事にしないとね。だから、田舎の人間は案外親切かもね。せっかく東京から来てるのに、いやだよって断ったらなんも進まんだろす。だって都会の人たちは、あたりとなりって付き合いないでしょ。ね、隣に誰がいるのかわからないって。あたりとなりってこのへんの田舎は言うけど、大事にするよ、みんなを。何があっても、助けたり助けられたり。朝起きればおはようって、みんな声かけあってそうして。だから、都会なんて行きたくない。元のところに戻りたいね。

 

【プロフィール】

話し手:平野勝雄さん

吉里吉里生まれ、吉里吉里育ちの漁師。幼少期からイカ釣りやサケマス漁など、漁と呼ばれるものは全般経験してきた。42歳のときに運搬船を扱う会社に就職。以後、日本全国を船で回る。自宅が津波の被害に遭い、現在は奥さんと2人で浪板の仮設住宅に住む。

聞き手:木村璃香

聖心女子大学4年

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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