東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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強い絆と元気な女性たち

この地に嫁ぎ10カ月で被災

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  • 話し手: 田中亜希子さん
  • 聞き手: 鈴木真理
  • 聞いた日: 2011年7月31日
  • 052/101
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一族の絆を強める鹿子踊り

 吉里吉里のお祭りは8月にやります。結婚する前も見に来たりしてたんですが、みんな祭り好きですよね。元々郷土芸能とかやってるので、それに属してる人は、県外とかに行ってても、祭りのために帰って来るみたいな。

 吉里吉里の場合は踊り。踊りですけど、何個かあるんですよ。虎舞とか鹿子踊り(ししおどり)だったり、神楽とか、なんか色々。旦那も鹿子踊りやっててという感じの家なんで。うちは鹿子踊り系列の家っていうか、親戚がみんな鹿子踊りで。去年の私たちの結婚披露宴でも、鹿子踊りやってもらいました。結局呼ばれて来た人ほとんど鹿子踊りできる人たちって感じなんで。何人かにお願いしてやってもらった感じでした。鹿子踊りしてるときも、「ああ、吉里吉里の鹿子踊りだ」って吉里吉里側の親戚が周りを囲むから、盛岡の私の親戚は「何やってんだろ」みたいな。「太鼓鳴ってるけど」ぐらいでよく見えなかった。

 鹿子踊りは、鹿子のかぶりものをかぶって踊ります。かっこいいですよ。神社でやって次の日には練り歩きます、町全部を。町には誰もいなくなりますけど、人が。出る人がほとんどで見る人がいない(笑)。みんな祭り好きで。

 見る人は年寄りとちっちゃい子供とか。大人はみんな踊るほうです。好きなんですね、きっとそういうのが。わりとそういう郷土芸能は男の人が多くて、女の人は手踊りで何丁目何丁目に分かれて、列作って、演歌みたいなのに合わせて踊ったりする。私も去年手踊りに誘われましたけど、かたくなに断りました(笑)。

 

ご近所の団結力

 吉里吉里は親戚だけじゃなくて、隣近所も親戚じゃないけど親戚みたいなもんっていう感じなので、ちょっとたくさんおかず作ったら持っていったりとか、洗濯物も雨が降ってきたら、勝手に取り込んで家の中に置いてあったりだとか。わりと、日中は玄関のカギをかけていないんです。だからこっちに来てびっくりしたんですけど、普通だったらピンポンして、「はーい」、ガラガラって開けて入るじゃないですか。こっちはピンポンとか何もなく、ガッと開けて、「お邪魔します」と言ってる頃には、もうリビングにいるみたいな(笑)。呼び鈴があっても、みんな使わない。使うのはほんとに、集金ですとか、そういう人くらいで。地域の人は玄関から声が聞こえて、玄関に出ていったときには、もう家の中に入ってます。

 そんなことが普通にあるんです。ここは。ずうっとそうやってきた人たちは助かるんだと思います。ずっと住んでた人たちには自然で。すごい団結力です。

 

「元気な女の人」に支えられる吉里吉里

 自分のお母さんも、若いころ親戚が多い家に嫁いできたんで、またそういうとこに娘を嫁に出すのはやっぱり嫌だったみたいですけど。お母さんには、反対したところで本人同士がいいって言ってるのに、親が言ったところでどうにもならないって、結局結婚したんですけど(笑)。

 結局、そういう郷土芸能以外にも何にしても、みんな仲がよくて、何でも助けてくれるから。

 吉里吉里の男の人たちを、女の人が支えているというか。そんな感じがしますね。女の人が強いというイメージがあります、吉里吉里。きっと漁師だから、ほとんどが。亭主関白に見えるけど(笑)、みんな海に出てるから、家守ってるのはたぶん女の人たちなんで、女の人が元気じゃないとやっていけないんだろうなという感じがします。見てると、どこの家でも。女の人は元気です。

 

【プロフィール】

話し手:田中亜希子さん

大槌町社会福祉協議会のケアマネジャー。出身は岩手県岩手郡岩手町。岩手県紫波郡矢巾町の高校を卒業後、同町の病院に勤務。同町の消防学校にレスキュー訓練を受けるため来訪していた消防士の夫と出会い、2010年4月に結婚。同年5月より大槌町に住み、同年12月からは同町社協のケアマネジャーとして勤務。夫と2人暮らし。

聞き手:鈴木真理

公益財団法人 東京財団 人材育成プログラム・オフィサー

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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