東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

暮らしを語り、想いをつなぐ。

お問い合わせ

復興の中心になる今の子供に正しいケアを

SONY DSC
  • 話し手: 佐藤貞興さん
  • 聞き手: 佐藤万貴
  • 聞いた日: 2011年10月22日
  • 055/101
ページ:3

 あともう1つ言っておきたいのは、この津波の経験をしてる子供さん方の心のケアね。中には、津波で流される姿を見た方もいるんだよ。で、ある日突然、パニックになるんだ。子供さん方が、じいちゃんばあちゃん方、家族が流れていく姿見たら、一生残るよな。でもしょっちゅう散歩で行き会っても、話題にしないもんな。だから学校教育ってのは、そこまで入っていかないと。心のケアって結局、頭にこびりついたものを和らげて、忘れさせるようにしなきゃなんねえんだ。で、パニックになった時も、自分でコントロールできるだけの余裕を持たせなきゃなんねえんだ。

 それはカウンセリングしかないんだよ。しかも、子供は知ってる人には心を開けるけども、初めて来た方には簡単には心を開けねえから、学校の先生方、担任さんをカウンセラーとして研修受けさせて、子供の思いを聞き取れるような人にしてもらわなきゃいけねえんだ。子供の気持ちになれるのは担任が一番だから。避難所は経営が精一杯で、障害児とか子供のことが政策として抜けてんだ。せいぜい遊び場でしょ。違うんだよな。下手したら一生残ってさ、社会生活ができなくなる可能性だってあるんだよ。大人の生活力が一番でしょうけども。今の現状を高めながら、この下も高めていかないと。同時進行にしていかないとさ、ダメなんだ。間に合わねえんだよ、いざって時に。なんとかして復興させようと思ってるけども、いざ形ができて魂を入れる時に魂ねかったらどうすんだっていうんだよ。意欲なくてさ、どうでもいいやってなったらどうすんだよ。そういうこともあんだよ。小学生にも、その次の中高校生にもさ、やっぱそれなりの手当てをしていかないと。

 と同時に、町の復興についてもどっかで考えさせて、将来、復興のために何ができるかってことも、機会をとらえて子供たちに投げかけていかねえと、だめになっちゃうよ。そこだけ言ってくれればいいんだ。行政だって分かってるけど、できねえんだな。予算ねえから、でもやっぱり忘れてはダメだなーと。だから、人材がいないところで、それを確保するにはどうするかってところなんだよ。そうすると今いるスタッフを使うほかねえから、レベルアップだから。そういう手立てもあんだよね。その辺まで考えてほしいな。

 

話す相手は誰でもいいわけじゃない

 仮設の方もつらいらしいんだ。家族がいなくなった孤独感をなくすために、どなたかにしゃべればいいっていうでもないんだよね。誰でもいいわけじゃないんだよ。この人はこの人なりの話し相手を探してるんだよ。だからこの人が欲しい話し相手を、第三者がいてお話をしながら発見して、その人を紹介するように手当てをするようにすればいいんだけども、今はこの人のお話し相手のために第三者が入って、「お元気ですか」とかって、それで終わりでしょ。それはね、私からすりゃ、意味がねえんだ。そういうことをきめ細かくやっていかなきゃならねえ。これはね、ボランティアじゃできねえんだ。専門性がないと。やっぱり声掛けする方も、行政でね、心がけ1つでも気を遣ってほしいな。「こんにちは」って言って、「ご飯食べた?」ってな。あと世間話くらいして、おじさんがしゃべんの待ってんだな。それくらいしかねえんだよな。そしてやっぱり正確に把握してきて、この方は「まいってる」な、少しひきこもり気味だなとかってことを、行政さんに報告してさ、あとちょっとケアしてもらえたらば、なおいいかな。とにかく訪問したから孤独感が治っかっていうと、治るわけないんだよ。なかなかそれだけはね、難しいんだ。

 

頑張れという言葉のつらさ

 そういうことも若い教員に教えてやんなきゃなんねえ。子供に「頑張れ」っていうじゃん。元気ねえから、頑張れよじゃねえんだよ。「頑張れ」で元気出せれば出すのよ。出せねえから困ってるんでしょ。その辺若い教員ってのは、なかなか分かんねえからね、何故かっていうと今の若い教員って優秀だから。もう理論づけですごいんだから。それにともなう実績ってねえから大変なのよね。

 失敗しちゃダメなんだよ、教育っつうのは。戻すに戻れねえんだから。重要なことなんだ。その辺も含めてね、やっぱり同時進行していかないと。そうすれば復興も意外と思ったより早くなっかもしれん。皆頑張ってやろうってなったらすごいと思うよ。若さはねえ、強さなんだ。若さを誰が作ってやんのか。それは今の大人たちが、作ってやんなきゃなんねえんだな。これが責任なんだよ。自分の生活もあるけれども、そのほかに子供たちをどういう若者にしていくかってことも考えなきゃ、と思います。

 

【プロフィール】

話し手:佐藤貞興さん

昭和24年8月27日生まれ。生まれも育ちも志津川。宮城教育大学・同大学院で生物を専攻し、卒業後は理科の教師に。管理職を務め、定年後は家で新聞販売店を営んでいたが、津波の被害により現在は休業中。

聞き手:佐藤万貴

慶應義塾大学文学部人文社会学科1年

 



■ 宮城県南三陸町志津川

宮城県南三陸町
「聞き書き」とは 詳細はこちら 一覧はこちら