東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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吉里吉里は「本当にいい町」

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  • 話し手: 前川竹美さん
  • 聞き手: 若尾健太郎
  • 聞いた日: 2011年9月23日
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これからの暮らし ―自分たちの力で、店を―

 仮設住宅には、7月28日頃入ったんですね。暑かったですよね。でもやっぱり仮設といっても、小さくても我が家ですよね。これからは、支援、支援って待ってるより、自分たちで動いて、買える物は買って、外へ出て行った方が、元気づくのでないかなと私は思うんですけどね。だから、買い物にもね、1週間に2回くらい出ますね。

 息子の店には、津波が上がった時の補償もないんだそうです。だから、今はちょっと、待ってるような状態でいるんだけども、私は、店をさせたいです。たぶん、お嫁さんもそう思ってると思いますよ。息子はね、仙台でいろんな仕事をしている方から、食堂の道具は戴いたんですね。だから今、自宅が流された跡に、凛々家をもう一度したいんだそうです。せっかく、お客さんも増えたったから、「凛々家さんどうなってるんですか」って、聞かれるって言うんですね。メールでも「がんばれ」って、いっぱい入るんです。だから、私は息子夫婦にお店をさせてあげたいなと思ってます。子どもたちにもお金がかかるからね。

 息子の夢は、(津波で更地になった)その畑に平屋でもいいから自宅を建てるという想像はしてるんですけど、なかなかこの土地が決まらないのでね。波の上がった所に建てるのは、ダメだって言うんですよね。かといって、高い場所って吉里吉里にはないんですよね。だから、もしそれが決まったら、今でも店をやりたいですね。

 

住みかはどこに ―吉里吉里はここにあるから、吉里吉里―

 国ではもうね、津波の来た所はダメっていってるんだけど、今度の町長さんがどのようにするのかな。やっぱり、海の仕事する人は浜の方がいいと思うような気がするんですよね。私もこの場所に戻りたいので、うちのあった所に、ほとんど毎日のように、行って見てきますよ。だから、草が生えてれば草も取ったり、なんにもできないけど、そうしてます。

 やっぱりね、元の場所さみんな戻ってね、隣近所でいたいような気もするんです。私たちの近所の人はね、みんな歳がいってる人だから、小さくてもいいから自分の屋敷にうち建てたいって言ってるんです。前は、近所で朝起きれば「おーい」っていうんです(笑)。そっちで顔出して、こっちで「おー」っていうとね、すぐ通じるから、「おはよう」って。顔が見えないと、今日はどこに行ったのかなとかね。やっぱりね、私は、吉里吉里で生まれ育ったから、今まで通りの町並みが出来たらいいのかなと、思ってるんですね。だいたいね、この町がなくなるっていうことは、吉里吉里の町がどこに行くのかなと思うんです。吉里吉里はここにあるから吉里吉里ですよね。

 こういう津波が1000年に1回っていうから、どうなるかわからないけれど、本当に、町がないっていうのがさみしいですね。若い人たちも、もう吉里吉里から出てる人たちもいるからね。花巻とか、盛岡とか、そっちの方で生活している人たちもいますもんね。だからこの土地に家を建てていいとなれば、早く戻って来る人もいるのかなと思うんだけどもね。なんか、いろんな偉い人の話聞くと、土地を買い上げて造成をしてっていうんだけど、それをするのにはね、1年や2年ではできないと思うんですよね。それまではみんな待ってられないと思うんです。いつになるのかね。

 

吉里吉里は海も山の幸も採れる、本当にいい町

 でもね、食べるものにはまず不自由しないから、今のところはこれでいいのかな。高望みしないで、みんな食べていければそれでいいのかな。息子は、孫たち2人を一人前にするって頑張らないといけないので、とりあえずそれで忙しいと思います。

 吉里吉里の地は、山の物でも海の物でも何でも食べられますもんね。野菜も採れるし、ちょっと高い山さ行けば、フキとかワラビとか山菜も採れるのでね。私自身も歩いて、食べる分採ってきてね。だから、私は吉里吉里は一番いい町かなと思ってるんですね。たぶん、息子もそうだと思うんですよね。いつか何かを話した時に、息子が「何でみんな吉里吉里から出ていくのかな。吉里吉里は、お金になんだよな。吉里吉里出ないでいてもお金とれるんだよな」って言ったことがありましたね。アワビも採れるし、自分が店をしながら、海の仕事もできるし、マツタケも採れる。だいたい4月から7月までウニの口開けなんですね。9月は、マツタケ採り。10月、11月になっと、アワビの口開けもあるし。

 食べるものもあるし、近所の人もいいし、周りもみんないいから、ここの町はいいなぁと思うんです、ふふふ。だから、たぶん私だけでなく、みんな、戻りたいと思いますよ、元の場所に。

 

【プロフィール】

話し手:前川竹美さん

昭和17年12月13日の吉里吉里に7人兄弟の末っ子として生まれる。洋裁学校卒業後、吉里吉里で小さな雑貨屋兼洋裁屋を営む。水産加工会社に勤めた後、息子夫婦が営む飲食店「凛々家」の手伝いなどしながら、息子夫婦と生活する。

聞き手:若尾健太郎

特別非営利活動法人共存の森ネットワーク 事務局

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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