東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

暮らしを語り、想いをつなぐ。

お問い合わせ

みんなに支えられて。いーいとこだったのよ。

064-top
  • 話し手: 佐々木さとみさん
  • 聞き手: 福島空
  • 聞いた日: 2011年10月22日
  • 064/101
ページ:3

田舎は田舎なりに付き合いながらやってんのさ

 ほんっとにうちのオヤジってのはすごい人だねえ。お店やってるとさ、付き合いも大変さ。いろんな野球大会だのってのあると応援行かなきゃなんねえし。休みも寝てらんねんだもの。あとほら、志津川には綱引きのチームがあって、大会があるんだけど、志津川町のメインイベントだね。22年間、うちのオヤジがその後援会長ってやってね。志津川町は強くて男女でアベックで行ったこともあるんだよ。それにもぐるっと付いていって。若い人たち選手さ、お金出させないように銭っこ集め。何十万づつ出すんだよぉ、企業の人が。ありがたいっちゃぁ。結局それも、若い人たちがね、店使ってくれるから、一生懸命それで返してやったり。

 それと、子どもいねけっど小学校の運動会は全部回るから、まづ。ぐるっとご祝儀持って回るの。先生たちお店来てくれるから、ね。帳消し? そういうのはどこからも出ねえからさ。飲み屋とかそういうのは大変なのさ。田舎は田舎なりにね、付き合いながらやってんのさ。

 オヤジ死んだ時お寺さんで、「記憶にある葬儀の参列者数、しばらくこの人数見なかった」って。すんごい人だったんだから。びっくりしてしまって。結局なんさもかんさもやってきてたから、ね。金もねえくせにさ、体が続く限りそういうのはやってくれた人だったからさ。それで息子はそれをなくしてらんねと思って「さとみ」ってのを継ごうと思ったんでね? オヤジが一番一生懸命やってたのを、なくしてはならないと。

 

みんなで火囲んで、おめでとうって

 年越しは店休むのね。店休んで、神社で友達と5人でお蕎麦を300食、31日の23時からタダで食わせるんだから。ちゃんとしたお蕎麦だよ。あのクソ寒いのに、雪ん中やるんだよー! 山さ、全部、釜から鍋からみんな持ってって。蕎麦300食運んで、こんなおっきな鍋にタレ作って、ミカン箱1つにネギ刻んで、天かすもミカン箱に1つ作って。そのうち、天玉用にって、卵提供する人出てきたりさ、お酒提供する人出てきたりさ(笑)。お祭りみたいに酒も飲み放題だから。それを5人でやって300食1時間ちょっとでなくなんだよ。毎年だよ、15年だよ。そうやって八幡神社を盛り上げたわけさ。

 結局ね、人が集まるところには集まんなきゃなんねからってやって。好きなのさ、そういう大がかりなことが。そしてみんな喜ばせてさ。ま、ボランティア精神だな。喜ばれるのがうれしくって。そうやってタダで食わせて、みんなタダで食って飲んで、わはは、ほほほって、みんなで寄って、火焚いて、みんな丸くなって話しかたする。それでほら、元旦のおめでとうってやるわけさ。それが良くてさ。

 

「おはようございます」の寂しさ

 そうやって楽しくやってたのにも関わらず、一瞬にしてねえ。八幡さんはなくなってしまったし。もう年越しの蕎麦もやんね。エラい(しんどい)。

 でもねえ、死んだ人たちを思うとさぁ、自分が生かされてると、志津川町をなんとかしなきゃね、って思うのっさ。でもほんとにどうしたらいんだかねぇ…。結局友達もみんなバラバラになってしまったし、環境も違ってくるしね。鍵かけなくってよかった家が、いま仮設で鍵かけないといけないし、何か外に出しとくと「しまってくださーい」って。なくなったのなんだのって言われてしまうから、それもやだねえ。近所の人ともバラバラなのそれが。最初っから移動すんのも部落単位でやればよかったのを。「おはよ」って言ってたのが、「おはようございます」になっと…。相手にひょっと引っ込まれると声がかけづらいでしょ。

 

とにかく早く町並みが

 この6ヶ月つのは大変ですね。とにかく早く町並みみたいのを作ってもらえれば。土地だね。まずもってね。まだそういう方向性も何もない。噂はいっぱい飛ぶんだけど、私は文章できたものしか絶対信じない。文章できて、初めて「ああ、決まったんだ」って思う性格なのね。職業柄かもしれない。いろんな人が来るでしょ、みんなの話みんな違うでしょ、それを全部受け入れたら大変でしょ。それを「うんうん、そうなればいいねー」って、聞き流しって悪いんだけどね。だからお店には合ってんでない(笑)?

 まあ、大変です。これから、先が見えないから、ね…。屋敷そのまんまけろって訳にはいかないから、ある程度町並みでも作ってもらって、店だけでも作ってもらえればねえ。家は山ん中さ建ててもいいし。ま、がんばって、志津川町ね、なんとか残しましょうよ、ね。

 

【プロフィール】

話し手:佐々木さとみさん

食材豊かな志津川で、季節料理を出す居酒屋を夫婦で約40年間営んできた。川沿いにあった住宅兼お店は津波で流されてしまったが、6月には息子さんがお店を継ぎ、営業を再開した。

聞き手:福島空

東京農業大学農山村支援センター 学術研究員

 



■ 宮城県南三陸町志津川

宮城県南三陸町
「聞き書き」とは 詳細はこちら 一覧はこちら