東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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夢中で駆け抜けた76年

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  • 話し手: 吉田富男さん
  • 聞き手: 浅野奈緒子
  • 聞いた日: 2011年12月10日
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3月11日の大津波

 14時過ぎ、小学校が早く終わるから、孫を迎えに行って、おばあちゃんと孫と3人で家の茶の間にいた。強い揺れで長かった。14時45分、市内の防災無線で大津波警報がでて、津波が3mと伝えられた。25年前、田んぼを埋め立て、少し高台に家があるから、甘い考えでうちまで津波が上がらないだろうと思った。

 家の奥の高台に、周囲の家族も含め登った。そしたら、ものすごい音がして、黒い波が来た。今度は西の方を見たら、海があるから山の影からダーッと波が来るのが見えた。要するに、漁港からの波と広田湾の波がぶつかった。巨大なエネルギーになって、庭にあった、買ったばかりのワゴンRが流されたんだ。その後、すぐに広間と車庫、家が浮いて、道に流されていってしまった。本当に一瞬の出来事だった。

 暗くなってきて、高台からオートキャンプ場に。ぎゅうぎゅうづめで、誰かの軽トラの荷台に乗せてもらって、着いたところがモビリアよ。倉庫のコンクリにブルーシート敷いて。津波で何もないんだもん。寒いし。みんなで雑魚寝。電気もないし、風呂もないし。お湯もない。余震も来るし、怖い。洋服もその時のまま、取り換えるものもない。夜、10軒足らずの中里部落の人が、おにぎりや炊き出し、毛布を持ってきてくれて、子どもから年寄まで雑魚寝。ありがたかったなあ。

 

震災後

 3月12日、朝起きてさ、車の中に免許証、財布、保険証、大事なもの入れてあったわけ、それを探しに行った。埋立地にがれきがいっぱいあって、愛車どこさいったかなあと思いながら探した。水たまりがあって、体が半分浸かってしまった。寒くて寒くて。3日間も探して、発見した。ボンネットに上がって泥を切れ端でよけた。そして、真水を実家に取りに行って、泥を流して、免許証、財布などを干した。

 それだけじゃなくて、嫁さん(息子の妻)が居なくてさ、亡くなったか分からない。電話も通じないわけよ。孫たちも「ママー」と泣くわけよ。来るからなって言ってさあ。10日後くらいに嫁さんを嫁さんの父さんが連れてきてくれたんだ。家族6人、無事だと初めて知ったんだ。安心したな。

 何日か経って、中里部落の個人の家でお湯を沸かして、「入りこ」って言ってくれて、歩いて20分くらいのところにお風呂をいただいたの。3月30日には、米崎町に送り迎えしてもらって、自衛隊の風呂に入りに行った。

 

女性陣の力

 避難所では女性が集まり、炊事班を結成した。夜は会議を開き、献立を考えて。人数確認して、センターハウスの人だけでなく、ドームのお年寄りにも朝・昼・晩にご飯を作り、運ぶ。苦労したし、休む暇がなかったようだ。1日おきに炊事を担当しては、意見の食い違いも出るし、汁の味、野菜の切り方にも神経使ったわけよ。センターハウスの広間でビニールシート敷いて布団引いて、朝5時起きて、用意して、運んで、昼寝もせずに昼の準備、そしてまた運んだんだ。

 

今後

 大津波を体験して、財産・車とも流されたけんども、家族6人、命があるばりもありがたい。だけども最愛の肉親を亡くされた家族、まだ行方不明になってる家族を思うと胸が張り裂ける思いだ。私ごとだけど、東京さ一人で暮らして40数年間、年中出稼ぎして建てた家・車・駐車場が一瞬で流されてしまって、なんとも言えない気持ちだった。昔からの文通もカセットテープも写真も全部流されてしまった。服も流されてしまったから、物資をいただいて、今着てる服ももらったもんだ。

 今でも夜中に目が覚めると、一瞬にして流されてしまったなあ、とふと浮かんでくるんだ。基礎と土台だけ残った。それも撤去してもらったから、ただの土地になってしまって。もったいない土地だなあと思う。津波で被災した土地に家は建てられない。だからあれだよ、6月20日から仮設住宅で自立の暮らしが始まって、今度は自分達で生活していかんきゃいけない。しばらくはお米を物資でいただいて、綺麗な水を貰ってな。でも、仮設住宅に何年も入ってられねえからさ、高台を見つけて、土地を求めなきゃいけないんだけども、今後は息子夫婦たちにまかせる。そんで、家を建ててもらって、みんなで住みたい。大変だけどさ。

 

【プロフィール】

話し手:吉田富男さん

陸前高田に生まれ、石巻の修行と東京や新潟への出稼ぎを終え、老後は家族と陸前高田で過ごす。地域の行事に積極的に参加し、部落会長も務めた。

聞き手:浅野奈緒子

玉川大学文学部比較文化学科4年

 



■ 岩手県陸前高田市田束地区

宮城県南三陸町
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