東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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やっぱ、吉里吉里が一番いい

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  • 話し手: 川原弘平さん
  • 聞き手: 牛田貴規
  • 聞いた日: 2011年07月09日
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転換期を迎えて―俺がちっさい頃は―

 ちっさいころは、地区ごとによって、海水浴に行くの。保育園でも小学校の1、2年生の子供はね、胸から首の間のとこまで海に入って、岩の上で待つの。そこにカゴを持たせて立たせておくの。そって中学生たちは皆、アワビでもカキでも獲る。小学校低学年の子供を、カゴを持つってことで連れて行くの。中学生も小学校の1年生の子供も、取り分を分けるのは皆同じなの、均等割。ちっさい頃からそういうことばっかりやってた。お隣の子供の面倒を見るって感じ。それも俺がちっさい頃はずっと続いたな。昭和40年くらいまでやったべか。

 その頃は、堤防の海側に加工場があって、山側に畑があったんですよね。商店の目の前は全部田んぼ。この辺の人は、農業をやってた。だけれども吉里吉里の場合は、農業ではお金に全然なんないの。自分のとこで消費するくらいの畑や田んぼを作ってた。海岸線の米って、高価に売れないし、スペースも狭いでしょ。あと、やませが吹くから良い米でないんですよ。だからね、田を作るっても、米作るっても、半端なところ。漁業も、今はもう、釜石の方で勤めてる人が多い。

 昭和49年頃にね、町で分譲をやって、田のあったとこに全部家が建ったんです。新しい人がどんどん家を建てたんです。津波の事は考えるども、そんなに津波ってのは来ないからね。だから、皆そんな感じで、嫁さんもらう前に家を建ててたわけだ。その頃、皆、水産学校を辞めて、他の地域で加工場やってる人も辞めていった。魚もそれくらい揚がらなくなった。今の商店を先代の社長から継いだのも、ちょうどこの頃だな。

 

津波が襲う―まさかそこまでとは思わんで―

 あの地震だから、津波があるっつの分かっとったから。1回波来た時、そこの堤防のある神社のそばまで降りに行ったの。角にある病院とこに行ったら、そこの下の家のおばあさんが2階に上がってたの。1回目の波で流れなかったから、「おばさん2階に上がってればいいがら、2階に上がっとけ」って2階のおばあさんに下から言ったの。

 2回目にすごい波が来たとき、家族は神社へ上がった。俺は角に車置いておいたから、走ってきて車に乗ろうかなって思ったども、エンジンかけてる間に流されんなあっと思って、そのまま商店の前まで上がってきたの。おばあさんには、「いいなあ、そこにいれば大丈夫だからなあ」って言って、その後波が来たの。それで、おばあさんの家さ流れて、今さ見つかんないの。

 2回目も1回目も波はすごかった。まさか商店があるこっちまで上がってくるとは思わなかった。家がそっくりそのまま流れたんだよ。だから流れてきた家の旦那さんが亡くなったっつか、見つかった。だから、波が引いて商店のとこまで来たらばね、「助けてけろ」って言って、運良く生きてる人もいたけれど、やっぱ結構、亡くなった人とか遺体とかあったよ。だから、あっちにもこっちにもいたからってことで、「じゃあ、こっち側集めっから」って、人を集めた。最初はずいぶん独り酒したんだ。

 

避難所暮らし―まさか東京からワカメさを―

 最初は、近所には全然出られなかった。バスも通らない、車もない、足もないって感じで、どこにも行かれなかった。

 食べ物は、最初、避難所にいた人は、朝は手の平に収まるくらいのおにぎり1個、夜も同じぐらいのおにぎり1個。昼はおせんべい1枚にキャンディ1個。そういう生活だったの。外で働く人たちもちっさいおにぎり1個。皆おんなじ食事。10日くらいは続いたんだべか。

 物資が入ってくるようになって、初めてお米とかが入ってきたら、ちょっとおにぎりをおっきくして食べさせっかって言って、食べさせた。だから、しばらくは野菜ばっかり、それもあったりなかったりだった。ご飯と作りもんだけ。だから、今までの生活と反対になったの。生魚もないから、魚なんて学校の缶詰めが入ってきたり、たまに知り合いが獲ってきたタラとかな、そのぐらいなもんだよ。

 だから、築地から今度魚さ送ってもらってさ。この辺は、ほんとに3月つったらワカメの養殖で忙しいわけ。まさか東京から俺たちワカメさを送ってもらうとは思わなんだ。あとは、沼津だったか、カツオを送ってくださって、カツオのお刺身を食べた。

 最初は、水が出なかったども、ここは沢水が豊富だからよかった。俺なんかは、朝早よ起きて顔洗うのは山さ行った。水はどっこにもあるんですよ。沢っつう沢の全部から水が出てる。水がないところは皆ここから汲んだの。バケツとかポリタンクとか持って、水入れてボイラーに水入れてね。毎日水汲みしたんです。

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
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