東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

暮らしを語り、想いをつなぐ。

お問い合わせ

ここで漁師になるのは当たり前だった

SONY DSC
  • 話し手: 田中巌さん
  • 聞き手: 清水桜子
  • 聞いた日: 2011年9月24日
  • 076/101

代々吉里吉里育ち

 田中巌(たなかいわお)です。昭和21年2月23日生まれで65歳。今は無職。若い頃はマグロの遠洋漁業をやっていました。今は奥さんと仮設で暮らしています。子供は2人。娘は結婚して隣の町にいたけど、家が津波に流されて旦那さんの家族と住んでる。息子は宮古にいます。

 うちの家族は代々みんな吉里吉里育ち。だからおれの兄弟もみんなここにいるしね。みんな吉里吉里にいるから顔合わすし、別にあえて会うことはない。でも長男と三男が死んじゃったから、今いるのは4人。兄貴と姉2人。おれは末っ子。三男はおれと3歳違いで、私が生まれたばっかりの時に死んだから、あんまり知らないけどね。

 

地域の活動

 活動はね、あらたまった活動はないけど、町内の作業がある。うちらの場合は町内から離れてたから、そこの人たちだけでやるの、1つのグループになって。海岸清掃は範囲が広いから、全員作業に出ないとだめ。だから、そういう点はみんな積極的にやったから案外良かった。お祭りとかね、そういう時もみんな積極的だったもん。ただね、集まりとか、そういう時はあんまり出たがらないんだよね。おれをはじめね、好きじゃないの(笑)。行ったって時間が長いでしょ? おれ飲まないから、そういう席大嫌いなんだもんね。行かないとやりにくさを感じたりはしないね。飲まないから来ないんだって、分かってるからね。そのかわり、作業とか何かがあるときは積極的に行くからさ。うちの所は全員出て、一生懸命だもん。

 

兄弟はみな漁師

 1番の長男は、おれが中学3年の夏のときに海で亡くなったの。同じ漁業だった。北洋で遭難したの。帰ってくるはずなのに帰ってこない。地元の人たちが8割ぐらいと、遠くの人たちが3人ぐらいだったかな。でも見つからなかった、全員だめ。次男も同じ漁師。みんな漁師だった。長男と次男とは同じ会社だったの。おれは船が違かったからね、同じ漁に行ってるんだけど、漁場も違った。2番目の兄貴は長男が亡くなってから遠洋漁業に行ったの。小っちゃい船は危ないっていうことで、亡くなってから行くようになった。

 

遠洋漁業は花形職だった

 当時は、この辺じゃ漁師になるのは当たり前のことだったの、本当に。昔はそれこそ相当優秀な人で良い人のとこじゃないと大学行けないでしょ。だから、当時の人は漁師になるのが普通だった。親は心配したんだろうけどね、結局は生活するためには漁師しかなかったもんね。

 遠洋漁業と近海の漁業と2つに分かれてた。遠洋漁業はすごかったの、当時はね、本当に花形。その頃は大体2年間の航海。2年帰ってこない。2回、3回ぐらい連続で行ったらなば、家1軒建てれた。だってそうでしょ、金を使わないで、飯を食うのは船、会社任せでしょ。あとは寝泊まりも会社でしょ。働いた金だけそっくり入ってくる。この辺でもね、向こうに行ってる人たちは良い生活してたの。一番の魅力がやっぱり金になるために、家族は賛成するの(笑)。

 

延縄漁業―エンジン操作―

 最初はね、釜石の鉄鋼場で働いてた。16歳から2年半、職業訓練でね。遠洋漁業に行くきっかけは吉里吉里の先輩たちががいっぱい船に乗って行ってたから。それを頼ってまず行ったわけよ。

 漁師っていうのは釣るだけじゃなくて、操作もしなきゃいけない。船の上でも役割分担があるんだ。操作もしなきゃいけないし、ある程度の整備もしなきゃいけない。手入れだね。私は最初からエンジン担当。エンジンを回したり、止めたり、回したり、止めたり。ほら、幸いなことに鉄鋼場人だったでしょ。だから案外行ってもすぐに、ある程度覚えやすかったね。

 19歳から遠洋漁業を始めたんだけど、遠洋漁業は遠くまで行くの。行くだけで1ヶ月かかるからね。早くて20日ぐらい、遅いと1ヶ月半ぐらい。どこへでも行きましたよ。一番遠いところは、カナダの沖だと、こっから大体40日間だね。大体2年航海を2回ぐらいで、大西洋に行ったら、1回ぐらい休むの。だいたい3ヶ月から半年ぐらい休んで、次の船に乗るわけね。当時は陸より海の上にいる方が多かった。それでその間に結婚したり、また色んな家族なんかに大変なことあるでしょ? そういう時は大体半年ぐらい休むんだ。

 うちらは延縄漁業。延縄漁業はマグロの漁業としては普通。縄には針いっぱい付けてるから、その針に餌を付けて。そしたら魚が餌を食うでしょ。それを機械で揚げるわけですね。大量なために時間がかかる。1日1回しかできないの。当時の船でたいだい1杯の船に28人ぐらい。で、10トンぐらいの小っちゃい船を後ろに引っ張って大西洋まで行くわけ。その分の人たちがだいたい15名ぐらい。ロープで引っ張って行くの。その船も同じ魚獲るから、その分もっと魚が獲れる。ただね、お互いに離れないの。魚を釣ったら本船にあげなきゃいけないから。小さい船は処理出来ないでしょ。船を合わせて、魚を引き取って。あとお互いが見えてる所じゃないと、何かがあった時にやっぱり危険でしょ?

 



■ 岩手県大槌町吉里吉里

岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里
「聞き書き」とは 詳細はこちら 一覧はこちら