東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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理論から繋げる津波対策

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  • 話し手: 大江康博さん
  • 聞き手: 葛西陽介
  • 聞いた日: 2011年12月6日
  • 083/101
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津波への疑問?我々はよく津波のことを知らなかった?

 まず1つは、地震が大きいと津波も大きいと一般に思われているんですけど、どうもそうでもないようなデータがあるんですね。実際に津波の高さと地震の大きさをグラフにしたのを見たら確かに相関性はないなあって。それから昔から、津波っていうのは引き波から始まるみたいに言われるんですけど、そのことに関してはどの本を見ても明確にその理由を伝えてない。ですから津波の本当のメカニズムは分からないという状況になっているんじゃないかなと思っているんですけどね。

 

津波の評価について?どうもおかしいなというとこから調べ始めたんです?

 実は、今回の津波に対して県が津波防災上の堤防を作ろうという話があるんですね。その津波の防災上の堤防の高さを何mにするかということを調査するために、昔の津波の記録を整理して、どういう高さの津波があったかを調べています。でも、昭和三陸の津波の残っている評価があまりにも低いなと思って調べて、よく考えたら昭和35年くらいまでは石巻の海岸線には誰も住んでいなかったんですよ。今は港だとか魚市場だとかありますけど、あそこはなかったんです。もし海岸線に人が住んでいればかなり高い痕跡が残っているんでしょうけどまったくいなかった。それで昭和三陸の記録が石巻の海岸の場合は2mくらいになってる。それじゃあ足りてないよ。私の住んでいたところでは床上1.5m、地面から2m、それに今回の地盤沈下を含めて2.7mくらいですから、海岸線にするとその3倍の6mとか8mとかそういう数字になるわけですね。

 

津波を理解から対策へ?ちゃんと整理して対策をしないといけない?

 それで津波の理論の発端はですね、海底が持ち上がって水が持ち上がると。持ち上がった水が重力で周りに流れていくと。こういうことを前提とした計算をしているわけ。でもね、持ち上がって流れていくっていうのは分かるけども、引き波から始まるっていうのはどうやって説明できるのか。今回も金華山の海底が見えたと。石巻漁港でも水が引いてそこを見たって人が何人かいるみたいです。そういう話がほとんど整理されていないんです。

 それで、もう1つ色々調べると、地震の震源の深さと津波との関連もですね、浅いから津波が間違いなく起きるとか深いから起きないというのもないみたいなんですよ。だから我々の一般に考えている地震と津波との関連とは繋がらないんですよ。そこが一番の問題で専門家もそこを説明できないから、我々にもそういう知識として理解されてないんでしょうね。津波の勉強に関しては津波の専門書見ても書いてない。

 今回の震災に関してはデータの整理はまだやってないような気がしますね。普通であれば、一般の会社ではトラブルがあればその原因と結果をちゃんと整理して、対策はどうすると明確に出すわけですね。例えばですね、今回車に閉じこめられてドアが開かなくて逃げられなくて亡くなったか方が結構いると思うんですよ。そうであれば、道路は水が来ないような道路にしないとダメとかね、普通はそういう対策を考えるじゃないですか。でも我々はまだ、どういう状況の方が犠牲が多かったとか多分聞いたことないですよね。だから、今回の事象と被害との関連がまだ何も整理されていない。本来はちゃんと整理して、それを元にこういう対策をしないといけないということがあるんだけども、今は復興、復旧を急ぐということもあるけども、何となくね、津波の方はここまではやるけども、その後は逃げればいいとどこかで割り切っちゃってる部分があって、それは本当は恐ろしいことなんですよね。だって本来取るべき対策が取られてなくて、本質的な対策でないものが取られている可能性があるわけで。そういう意味ではそこをちゃんとね、整理して、本当の対策を取るべきだと思うんです。

 

今後の対策?一般の方にも知ってもらいたい?

 こういう理論から対策に繋げるのは地方自治体では無理だと思うので、国レベルで対策を考えないと。津波の破壊方向がどうだとか、そういうところを調べないといけない。そうなるとこれからの調査のポイントもかなり違ってくると思うんですよね。過去のデータといっても、要するにどれだけ大きい地震があったかということと、津波がどこまで遡上したかという痕跡でしか調べてない。そういうことだけ調べても実際に津波のメカニズムが分かったことにならない。だから100年に1度とか1,000年に1度という整理自体が無意味ではと思うんですよ。ただ、一般にはデータが伴わないと理解してもらえないんですよ。たけど、場合によってはこういうことも考えられるよという情報は一般の方にも知ってもらいたいですね。

 

【プロフィール】

話し手:大江康博さん

石巻市生まれ。高校、大学に進学後宮城県外の会社に勤務。転勤で全国を回る。その後、父の会社を継ぎ、現在は石巻市に在住。

聞き手:葛西陽介

公務員・森の聞き書き甲子園1期生

 



■ 宮城県石巻市

宮城県石巻
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