東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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仲間の強さを感じられたな

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  • 話し手: 村上庄一さん
  • 聞き手: 金井千春
  • 聞いた日: 2012年12月10日
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自己紹介

 こんにちは。名前は村上庄一(むらかみしょういち)です。昭和13年の4月26日生まれで、73歳です。家族は、妻のカネ子と長男、長女がいます。長男は横浜で、長女は(岩手県下閉伊郡)山田町ってとこに住んでます。だから今は(中里部落の)腰廻(こしめぐり)で家内と二人で住んでます。3月11日は津波が家まで来なくてよかったよ。腰廻はまずみんな無事だったからさ、すぐ炊き出しして、自衛隊が来るまで頑張ったよ。

 

東京へ修行

 職業は建築業です。まぁ、大工だね、作ってばっかり。昭和29年から大工やっててさ。うちは貧乏で、今はみんなと同じくらいだけど昔はものすごい貧乏でね、学校に行く力もなかったし。それで大工になることにして東京で年季奉公をしたの。丁稚奉公みたいなやつね。小学校卒業して、14、5歳で弟子入りしてさ、うちの親父も大工はやってたんだけども、他人の飯を食わないと苦労が分からないでしょ。人間っていうのはまず、一人前になるには他人の飯食わないと大変さが分からないのさ。だから家では仕事しないで東京まで親父は旅に出させたわけさ。中学校卒業してね、年季奉公に行くのって大変なんだよ。中学は卒業して、進学か就職はその頃決めるでしょ、そんでうちは金もないし、頭もないから、手っとり早く職に就こうって決めたの。それで、親父から俺のところでじゃ駄目だって言われてね、東京行ったんさ。親父も旅に出てたから、それほど寂しいとかいう気持ちはなかったね。

 

人生一生修行

 それから岩手に戻ってきたのはだいぶ後だね。家にいて仕事してるのはここ10年くらい前からだから60歳すぎてからだね。それより前は東京から仙台に行ったりしたよ。弟子入りっていうのは、まず4、5年くらいやるの。師匠とはいっても、いつまでもいるわけにはいかないんよ。ある程度覚えたら今度はよそで働かなきゃいけないんだよ。だから弟子を上がったからって簡単に一人前ってわけではないんだよ。壁にぶつかって苦労しないとね。今でも修行なんだから。人生一生修行だよ。

 今でも現場に立って仕事してるよ。震災と津波の影響で、仕事の依頼はたくさん来るよ。今は、津波が被ったけど家が残ったって人のところを修理してるんだよ。津波が食ったところはもう砂だらけでね、細かい砂が掃除しても出てくるんだよ。

 

昔と今―気仙大工の技

 今は大工になる人なんていないから、弟子もいないし、大工を継いでいくというのはやっぱきついんだね。そうなると昔ながらの大工の技って言うのが無くなっちゃうんだよね。この陸前高田周辺は気仙大工が結構有名でね、気仙大工っていうのは木をうまく使う技術があるんだよ。そういう技が無くなるのは大変なことだけど、大工をやる人もいないからね。まず弟子入りとして来ても3日か1週間持てばいい方だよね。みんないなくなっちゃうんだよ。やっぱそれだけきついのかもしれないね、相当大工やろうって人じゃないとね。気仙大工に関する本みたいな物もあるかもしれないけど、ただ見ただけじゃ駄目だからね。理屈がわかっても実際には体が動かないからね。だからきついってことだね。時間もかかるし、1日、2日の話じゃないし。1軒の家を建てるようになるには最低でも5、6年は覚えるのに必要だね。まぁ、技術を覚えるのに時間がかかるから大変だし、今の若い人には無理だね。俺の場合は貧乏だし、働くしかなかったからさ。

 今のところ、うちの工務店にいるみんな、電動の道具を使ってるよ。俺もね、やっぱ便利だからさ、作るのは電動だよ。ただ、怪我はするんだよね。俺もほとんど指が満足じゃないんだよね。5本あるけど全部怪我してるしね。それでも能率とか考えると電動の方がいいね。まぁ、妻からは「毎日怪我しないようにね」って言われるんだけど、「それはわかんないよ」って言い返すのさ。なんぼ気をつけても駄目だからね、やっぱ年取ると気持ちは一緒でも力とかも恐らく無くなってるからね。駄目なんだね。

 

自分の好きな仕事だから

 それでも、今まで大工やってきて良かったって思うよ。まず、今から30年くらい前に自分の家を建てたんだけど、本当の建てっぱなしで済んだわけ。まず瓦上げて、中の仕事は残して徐々に進めていったんさ、自分一人でね。普通はさ、早く住みたいから内装とか全部早く仕上げるんだけど、俺はそんな金ないからゆっくりゆっくりね。それでも自分の家だから自由にできるわけでね、よその家じゃそうはいかないからね。そういう面では良かったなって思う。お金があればいいんだけど、そうはいかないから働いてきて今年はここをやろうとか、来年は内装にしようと、そういう風にやってきたんだよね。いやーっ、ふり返ってみても、あっという間だったよ。なんて言うんだろう、時間が経つのは長くないな。やっぱ自分の好きな仕事だから早く感じるんだろうね。夢中になることだし。

 



■ 岩手県陸前高田市田束地区

宮城県南三陸町
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