東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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負けない子供に育ってほしい

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  • 話し手: 吉田恵さん
  • 聞き手: 葉山大樹
  • 聞いた日: 2011年12月11日
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郷土芸能―剣舞―

 ここ田束(たつがね)に、剣舞(けんまい)っていう郷土芸能があるんですね。それを夫も小さい頃からずっと踊っているので。こういうものは残してほしいって気持ちもありますね。ずっとずっと続いて、踊っているので。高学年の子供たちも小学校で運動会の時とかに踊ったりとかもするので。息子にもそれを繋げてほしいかなって気持ちもあったりします。年1回の盆踊りの時、この地区の小学生は皆で踊るので。そういうのも大事にしたいし。子供が成長していって、嫌だなって思う時期もきっと来るんだろうけど、続けていくことで良かったなって気持ちは生まれるのかなって思うし、そういうのって続けていく人がいないと続かないから。

 夫自身も今でも何かあれば、都合がつく限り、剣舞に関わってますし。親から直接教えるような感じではないんですけど、地元に残った人が大人になって関わっていければ良いと思います。上手くできないところを少し教えたりしながら。ぜひ残してほしいですね。

 

地域のつながり

 顔を見れば挨拶とか、元気?とか風邪ひいてない?とか、そういう話はしたりします。元からのコミュニティでもあったと思うんです。でも、避難所での生活でより仲良くなったのかなっていうのもあります。

 私の事を言えば、日中は仕事に行ってて家にいないわけで、週末とかも出かけたりしていないし。本当に関わる機会が少なかったというか、自分から関わらなかったというのもありますけど。

 この地域ですごいなって思ったのが、同世代のお母さんたちが公民館に集まって、年に1回、飲み会みたいのがあるんです。10人位集まりますね。私が嫁に来たのが20代で、20代から40代までのお母さんたちが集まってやるんです。だからそこは何回か行って、仲良くさせてもらっています。それがあったおかげで、この人はあそこの家の誰だみたいのが分かったり。

 

負けない子供

 震災後、子供たちの気持ちをちょっとでも発散させたかったし、震災の現状から離したかったから、結構内陸の方に足を運びました。それでも、内陸行ってるのに、子供が「ここは津波に遭わなかったんだね」って言うのね。それ聞くと、ここは海遠いからねとか言ったり。だからそんな時は地震があったら高いとこ行くんだよって言ってます。いつか忘れちゃうのかもしれないけど、忘れちゃいけないことだから。

 これからの学校とかの環境の心配もありますし、メンタルな面での心配もまだまだありますけど、それは自分たち親がいれる時は一緒にいて、いっぱい関わっていくことで安心感を与えるしかないのかなって。まあバタバタはしてるんですけど、それしかできないのかなって思います。

 負けない子供。気持ち的に負けない子供になってほしいですね。気持ちで負けちゃうと沈んじゃう。沈むのは簡単ですけど、浮上するのにパワーいるから、それが出来るようになって欲しいですね。今の時点で子どもたちはもちろん、大人でも一人になったらきついんだけど、ほんとにそんくらい強くなって欲しいかなって。

 

今後の暮らしに対する思い

 どうしても今、ちょっとしたことでイライラしたりピリピリしたり、自分自身に震災前以上に心の余裕がないことが多く、自分の中で頑張り過ぎてしまう所がどうしてもあって。だからもう少し心にゆとりを持って、上手く家族とも話しながら生活出来ていけばいいんだろうなって。

 後は家をどこに建てるかとか。これからのライフプランとか見えてくれば違うのかなとは思いますけど。長い年月かかると思います。高台移転をするかとか、場所はどこに移転するかとか、今は色々と話し合っている状態です。これから集まって話をして。出来ることなら近所の人と一緒にと個人的には思いますけど。せっかくつながりがあるんだからっていう気持ちはありますけどね。家族それぞれの思いがありますから、難しいですね。

 

【プロフィール】

話し手:吉田恵さん

陸前高田市の高田町松原地区で生まれる。小学2年の息子さんと5歳の娘さんの母。現在は陸前高田で保育士として勤めている。

聞き手:葉山大樹

玉川大学文学部比較文化学科3年

 



■ 岩手県陸前高田市田束地区

宮城県南三陸町
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