東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

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この町をちゃんと残さないとね

孫たちに語り継げる町

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  • 話し手: 阿部禎介さん
  • 聞き手: 山本愛
  • 聞いた日: 2011年10月22日
  • 093/101
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祭り―もっかい太鼓打ちたいな―

 本当に地域が一体になって楽しめんのは祭りだったの。だから達者なうちにあの太鼓の音色とか打ち囃子とかの賑やかさ、もう一回ね。お祭りを最後にやったのはもう5年前くらいになるね。震災がなければそろそろやる頃なんだけどね。ところが、小学校が統合されてバスで送迎になって、地元の小学校にいなくなったでしょ。だから集めて稽古すんのも大変になってきたの。前は体育館借りてそこで稽古したんだけど、そういう子どもたちも少なくなってきたからね。でもとにかく、高齢者とか地域の人が、祭りはいつやるんだって催促してくるからさ。とにかく先に立ってやんなくちゃなんないから。もっかい太鼓打ちたいな。だから、集団移転とかね、高台に移んのとか決まったら、その時点で若い人に声かけして一回だけ祭り開きたいな。子供たちの喜ぶ姿ね。お化粧してさ。ちゃんと衣装も着せて。お祭りの振袖、タスキ着せて。頭に鈴つけて、太鼓ずらーっと、小太鼓、大太鼓があってさ。大太鼓は小学校高学年。子供神輿がまた面白いんだよね。化粧してお姫になる子もいれば、すんごいお祭りなの。準備にびっちり1ヵ月かかる。地域の人々全員に役割分担があって、花作りとか、みんな手作りだよ。これは歴史古いんだよね。俺たちがもう子どものころからだよ。みんな期待してると思うな。

 

復興 ―ふるさとってものを、残していかないと―

 早くみんなの明るい顔を見たいね。兆しだけでも見たいね。ああ今度はここに住むんだって。そういう場所が早く決まって欲しいね。一応仮設住宅は2年って決まってるでしょ。行政も頑張ってるんだけど、うちの自治体でも若手がいろいろ土地交渉してる。無償で譲ってくれる地主さん探してたり、希望はあるみたい。みんなの力は、本当にすごいってば。

 この土地からは出れないね。もう愛着なの。この土地がなくなったらって、考えたくないもんね。

 私はね、そんなにお金があるわけではないけどね、娘も息子もどっちも同居ってのは無理なのね。お互い、今回4ヵ月半お世話になってきたけど、みんなやっぱり我々に対して神経使ったのね。我々もまた子どもに対しても。だから集合住宅とかね。家賃安くしてって、そういうものがあればそういうとこに入って、なるだけ、地域の人の近くにいたいな。ここからは離れたくないな。そして、やっぱりそういう形で故郷っていうのは孫や子どもに残すべきもんなのね。だからやっぱり孫たちのことを考えると、故郷ってものを、地域の名前を、ちゃんと残していかないと、と考えてます。

 だから我々が消滅した100年後でもこの教訓を無駄にしないように、語りついでってもらいたい。さらに、地震情報だってさらに密度増してって、正確に出るようになるはずだから。みんな個人個人でもパワー持ってるからね。負けん気ね、人に負けるもんかって。振り返ればなんの誇れるもののない人生だったけれど、人間100年も生きられないもの。少しでも人々の役に立ちたいと思っています。

 

【プロフィール】

話し手:阿部禎介さん

南三陸町で生まれ育った。建設会社やエンジニアなど様々な仕事を経験。長い漁船生活の後、行政区長や民生委員を務める。

聞き手:山本愛

慶應義塾大学文学部人文社会学科教育学専攻4年

 



■ 宮城県南三陸町志津川

宮城県南三陸町
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