東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

暮らしを語り、想いをつなぐ。

お問い合わせ

苦労、また苦労、でも生きて頑張んなくてはと思って

SONY DSC
  • 話し手: 吉田アヤ子さん
  • 聞き手: 猪股明希
  • 聞いた日: 2011年12月11日
  • 094/101
ページ:3

残った傷跡と日常の幸せ

 その後はね、ボランティアの人が来てくれてね、いかったよ。3月18日に来たときなんかね、パンだのジュースだの持ってきてくれて泣いて頭下げたよ。外人の人もいたっけね。冷蔵庫1人で担いで行ったんだよ。どうもって頭さげたらぽけーっとしてて、よその人はさんきゅ、さんきゅってこうやって言ってたけどね。あとボランティアの人と写真撮ったりしたね。ほんとにありがたかったよ、瓦礫とかもしっかり片づけてくれんだもんね。

 だけっどあれだねえ、今寒くなってから部屋さ居っと思い出すね、布団から座布団から着物から何から全部みな苦労して。それはうちだけでねえけど、ここさ来て泣くこともあったよ。お父さんが買ってくれた娘の成人式の着物もねぇ、娘が家出るとき、母ちゃん家さ置いてくって置いてったの。それもみな全部駄目になってしまった。いまはもう諦めたけどね。それでもおっきいじいちゃんとばあちゃんと旦那の写真は見つけたの。津波の後に探した探した。ゴミん中こうして、泥もこうしたら入ってたのね。じいさんとばあさんの並んでたよ。お父さんのは誰かに踏まれたんだろうね、でも写真屋さ持って行ってきれいに直してもらった。でね今は孫の部屋さ飾ってあんの。

 私は癌を2回胃手術したりしてから11キロやせたけど、今だいぶいいよ。今ではアヤ子さんは少ししわっこ(顔のしわが)減ってきたって言われるもの。食べ物も時々来るし、米は最初もらってたけどこの頃買って食べてるしね。仮設さ来てから少し食べるし、なにより好きなの作って食べるからね。今は孫が仕事行くのが朝5時か遅くて8時だらか、ご飯準備したりして、4時半ころ帰ってくると、ばあちゃん帰ってきたよーって言うの。布団が冷たいから湯たんぽ入れて、ばあさんも湯たんぽ、孫も湯たんぽってね。電気はなるべく節約すっぺって。仮設住宅の玄関は二重扉になってっけどまだ寒いね。吹き込むってことは全然ないけどね、下の方が寒いんだ。前にストーブも来たけど、ここの仮設を出てくとき返すっていうからそのまま箱さ入れてまだ使ってないんだ。けど寒くなったらどうなっか分かんねな。節約も大事だけっど体も大事だかんね。

 仮設では近所の人とも友達さなってるよ。お互いにいろいろ経験してるしね、良い人に恵まれたからから。私の所はにぎやかだよ。80歳もいれば90歳もいる。90何歳のばあちゃんと毎日編み物したり縫物したりね。そんで節のもの来るから、店から野菜だのタケノコだのフキだの買ってって、鍋さひとつ煮て、あと周りさお裾分けしたりね。そうすっと、あっちからもらってたからって、こっちからかぼちゃあげたりとかして仲良くするようになってるから。それに知らない人でも、まあ最初はあの人は言葉かけないなあ、ずいぶん不愛想な人だなあって思うの。でもねそういう人でもね、こっちの方で言葉かけっかなっと思ってね。今日は天気いいね、今日は曇りだから洗濯物干せねぇねって話しかけたらお互い言葉かけるようになったよ。「吉田さん今晩のおかず何?」「マグロの刺身だぁ」「よく飽きねえこと」、って笑い話して暮らしてるよ。

 最近は物資でいうとトラックできて和歌山からミカンも置いて歩く時もある。ありがたいよ。こんなにいろいろな物資もらうと思わねかったもの、ありがてかったよ。もう着るものなど、部屋さ帰っと箱さいっぱい入ってんもの。それでもね、ボランティアの人とか仮設で何か足りないものありますかって、聞くんだ。だからその時は、そりゃ足りないものありますよ、これ(手で「お金」のジェスチャー)ですって言ってやると大笑いするんだ。あ、これですかあって。お巡りさん来た時もね、これが欲しいですって言ったら、ああそれはねえってみんなして大笑いすんだ。ばあちゃんそんな、なんだかって言わねんだよって孫に言われっけっど、いいべした、人のことなんだかって悪口言う訳でねえんだからってね。だって人を笑わせんだからねえ。

 

孫とともに

 私は石巻の矢本で中学校卒業してこっちさ来て、それから苦労だらけだ。母親がいねぇからね。母親がいなくて苦労して、そしたら今度はお嫁さん時代に苦労して、今度は津波で苦労して…。今回の津波で家は全壊だし、廣間の長屋もまだ10何年くらいしか経ってねかったから新しかったんだ。本宅も30年くらい経ってねぇなぁ。しかも津波の後、すぐ新しい家建てんのはだめだって言われてね。

 いろいろな苦労はしてきた。でもね、考えようです。孫が優しいから、ほんとに優しいんだ。評判がいいんだから。私が好きなもの買ってくるし、あと休みんとき連れてあるかれっから。ばあちゃんどこさ行くーってね。だからここの仮設にはあと1年何ヵ月いて、温かくなって日が長くなったら大工さん頼んで長屋を直して来年、また孫とふたり生活すんの。

 

【プロフィール】

話し手:吉田アヤ子さん

昭和11年3月15日生まれの77歳。宮城県の石巻市矢本町出身。石巻の中学校を卒業後、女中として結婚するまで勤める。避難生活当初に11キロ体重を落としてしまう。仮設に移動してからは少しずつものを食べられるようになった。現在は孫と仮設に二人暮らし。

聞き手:猪股明希

玉川大学文学部比較文化学科2年

 



■ 岩手県陸前高田市田束地区

宮城県南三陸町
「聞き書き」とは 詳細はこちら 一覧はこちら