東京財団×共存の森ネットワーク 被災地の聞き書き101

暮らしを語り、想いをつなぐ。

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この取り組みについて

まちの風景が変わっても、かけ替えのないものがあります。それは、風習、言葉、食べもの、日々の仕事や年中行事など、日常の暮らしと結びついています。

被災からの復興、それとつながる私たちの生活の見直し、その積み重ねの先にある社会の新たなかたち。いずれも大きな課題ですが、その足場として、暮らしにひそむかけ替えのないものに、もっと目を向けていく必要があるのではないでしょうか。着物は身体にあったものを選ぶように、復興計画や社会の仕組みも暮らしにあったものをつくることが大事です。
その思いで、公益財団法人 東京財団と特定非営利活動法人 共存の森ネットワークが主催となり、2011年7月に「被災地の聞き書き101」を始めました。

 

1.「被災地の聞き書き101」の概要

2011年3月11日の東日本大震災に遭われた方々で、ご縁あってお会いした101名(※)に震災前の暮らしの様子を中心に、震災後の状況や今後への想いを一対一でお聞きしました。
(※)「101」の意味:切りのいい100ではなく次があるということ、そして、個が個に向き合い耳を傾けること(1 On 1)が大切であるということ。

聞き手には、主催者である東京財団および共存の森ネットワークのスタッフのほか、その呼びかけに応じた社会人や大学生などがボランティアで参加しました。その聞き手が避難所や仮設住宅を訪問し、様々な職種の話し手のお話に耳を傾け、約二時間、両者が対話しました。(なお、震災後の状況のお話や今後への想いは、あくまでお聞きした日のものですので、時間の経過にともない心境が変化した方もいらっしゃると思います)。

聞き手は、録音した対話を書き起こし、話し手による一人称の文章にまとめた後、話し手の確認を経て作品を完成させました。そして、話し手と聞き手が一緒につくりあげた作品は当ウェブサイトで公開するとともに、冊子にして話し手等にお渡ししています。

 

2.「被災地の聞き書き101」の趣旨

「被災地の今後の暮らし」につなげる
話し手の多くは、過去を思うより明日を考え、毎日を積み重ねてこられたと思います。震災を境に大きく高まった明日への不安を抱きながら、少しずつでも前に進もうとするとき、その確かな拠り所は、自分たちが営んできた暮らしではないでしょうか。それは、他人が頭のなかでこしらえた“あるべき”町並みや生活の作り話ではなく、話し手自身の身体が記憶している本当の物語です。
過去の再現は難しいかもしれませんし、道路や建物など「かけ替える」ことが必要なモノもあると思います。そうであればこそ、「聞き書き」を通して、これまでの暮らしのなかで出会った「かけ替えのない」ものを改めて感じ取ってもらえるとありがたいです。それが、話し手自身、そしてその地域における今後の暮らしの物語を見出すことに、少しでもつながればと願っています。
また、津波で地元の歴史資料が流されてしまった地域では、そこに生きる人々の暮らしと結びついている伝統や生活文化を後世に残すことにもなります。国内外の各所で進んでいる、震災前の風景や震災時の状況などを写真や映像で残す動きとともに、暮らしという個人の総合的な営みの記録は、次世代の担い手にとっても価値ある資料になると思います。
「私たちの生活の見直し」につなげる
あれば便利だがこんなに多くのモノが必要なのかといった世の中のトーンは、様々なアンケートなどをみると前からあったようです。そして今回の震災。先進技術を駆使しエネルギーを使い経済的繁栄を手に入れてきましたが、その限界のようなものが可視化され、これまでの生活でいいのかという感覚、当事者意識が高まっています。
その意味で今は大きな転換点にあると思いますが、そこで大事なことは、文明論に飛びつくのではなく、私たち一人ひとりが日常生活で当事者意識を発揮し、具体的な選択を続けていくことではないでしょうか。生きるために大事なこと、守ることは何か。なくても特に困らないもの、経済効率性で判断していいものは何か。その問いを暮らしの個々の場面でみずからに投げ、頭よりも身体で答えを見つけ、どんなに小さなことでも行動に移していくことが大事だと思います。
どの「聞き書き」作品も話し手にとっての真実であり、また風土に根付いた生活や文化もあるため一般化できるものではありません。ただ、暮らしという人間の根本に関する話ですから、ある程度の普遍性がひそんでいると思います。被災地の再建とともに、日本の将来のためにも考えるべきことが多くちりばめられていると思います。
具体的な体験が描かれている作品を読み重ね、普遍だと思うこと、かけ替えのないと感じることを暮らしに残し、取り入れ、なくてもいいものを暮らしから取り除く。その積み重ねが、個人の生活のみならず、社会のあり方も着実に変えていくのではないでしょうか。
話し手と聞き手のつながりが、被災地の明日につながり、日本社会の明日につながる。様々なつながりの可能性を広げるプラットホームとして、「被災地の聞き書き101」をご活用ください。

 

3.主催者のプロフィール

公益財団法人 東京財団
東京財団は、非営利・独立の民間シンクタンクとして、様々な問題の本質を見極め、同時に生活感覚や現場感覚を大切にしながら、具体的な政策を実現するために世の中に働きかけていきます。また、社会に対する志と、広い視野・深い知恵をもった人材を国内外で育てていきます。政策研究と人材育成?私たちは、これらを両輪に社会をよりよく変えていくことを目指しています。
特定非営利活動法人 共存の森ネットワーク
毎年全国の高校生が農山漁村を訪ね、そこに生きる人々の知恵や技、生き方を「聞き書き」する『聞き書き甲子園』プロジェクトが2002年に始まりました。当NPOは、その活動に参加した学生たちを中心に2007年に 設立。人と自然・人と人との「共存」を基本とした社会づくりと新たな価値観の創造に寄与することを目的とし、同プロジェクトの運営の他、様々な活動を行っています。

 

 


「聞き書き」とは